中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索
教え子が継ぐ被爆遺品 故井上桂園氏の書道具など3点 '08/7/23

 安田女子大(広島市安佐南区)の元名誉教授で、著名な書家の故井上桂園(けいえん)氏(一九〇三―九七年)の遺品で、原爆の傷跡をとどめる書道展の入賞メダルなど三点を、教え子の信広友江教授(55)が受け継いでいる。被爆六十三年の今夏、信広教授は教材として学生に示し、原爆の恐ろしさと平和の尊さを伝える。(貞末恭之)

 銅製のメダルは直径十センチで「泰東書道院」と刻んである。戦前にあった流派の作品展の入賞者に贈られた。一部が欠けて変形している。端渓硯(すずり)はひび割れがある。印章が四角形の「関防印」は四つに割れている。

 原爆投下当時、井上氏は庄原市にいて無事だった。しかし、爆心地から約二キロの中区昭和町の自宅は全壊。三点は投下から数日後、がれきから掘り起こしたという。井上氏が亡くなり、遺族が西区の自宅で遺品整理をしていて見つけた。三点を含む計六点を教え子で大学の同僚でもあった信広教授に譲った。

 井上氏は岡山県薗(その)村(現倉敷市真備町)出身。広島高等師範学校(現広島大)の助教授(現准教授)だった三九年から書道の国定教科書、戦後は五一年から検定教科書を執筆した。

 書道史や書道教育を担当する信広教授は「書道具を通じ、原爆を身近に感じてほしい。井上先生が大切に保管していた意味を、学生とかみしめたい」と話していた。

【写真説明】原爆の生々しい傷跡を残す井上氏の遺品を示す信広教授。左奥がメダルで左手前が印、右は硯


MenuTopBackNextLast