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祈りのヒロシマ・原爆の日 式典に最多55ヵ国 '08/8/6

 一発の原爆が、多くの命を奪ってから六十三年。広島は六日、原爆の日を迎えた。爆心地近くの広島市中区の平和記念公園では午前八時から原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)が営まれる。被爆者や遺族らが原爆犠牲者を悼み、街は慰霊と平和を願う祈りに包まれる。(黒神洋志)

 式典は原爆死没者名簿の奉納で始まる。この一年間に亡くなったり、新たに死亡が確認されたりしたのは五千三百二人。秋葉忠利市長と遺族代表二人が計九十三冊を原爆慰霊碑に納める。

 遺族代表や被爆者代表らに続き、首相として初参列する福田康夫首相、河野洋平衆院議長、議長として初となる江田五月参院議長らが献花。原爆が投下された八時十五分、遺族代表の西寿実さん(47)=西区=と、こども代表の川内小六年倉西桃子さん(11)=安佐南区=が「平和の鐘」を鳴らし、参列者が一分間の黙とうをささげる。

 核兵器をめぐる国際情勢は厳しい。核拡散の懸念はなお広がっている。秋葉市長は平和宣言で、核兵器廃絶は被爆者の苦しみから生まれた真理であるとし、市民の都市単位の協力による実現を訴え、広島の果たす役割や決意を表明する。

 続いて、こども代表の吉島東小六年本堂壮太君(12)=中区=と、幟町小六年今井穂花さん(11)=西区=が「平和への誓い」を読み上げる。

 福田首相と藤田雄山広島県知事もあいさつ。国連の潘(バン)基(キ)文(ムン)事務総長のメッセージをセルジオ・ケロス・ドアルテ軍縮上級代表が代読する。

 ヒロシマの願いの広がりを示すかのように、各国来賓は過去最多だった昨年の四十二カ国をさらに上回る五十五カ国から大使や参事官らが出席。核兵器保有国からもロシア参事官のほか中国の駐大阪領事が初参列する。

 福田首相は式典終了後、首相として七年ぶりに「被爆者代表から要望を聞く会」に出席する。焦点となっている原爆症認定問題で、どんな発言をするのかに注目が集まる。

 公園内外に点在する碑でも学校や同窓会、職場単位の慰霊の集いが続く。国内外の人たちの平和行事も相次ぐ。若い世代への体験継承を被爆地が模索する一日でもある。

 ▽産業奨励館の記憶

 原爆の日を前に五日夜、世界遺産の原爆ドーム(旧広島県産業奨励館)のありし日の姿を川面に再現する上映会がドーム前の元安川であり、原爆の威力と悲惨さを表現した。

 市民団体「イマジン・ハウス・プロジェクト」(山根進委員長)が企画。まず原爆ドームを映し出し、アニメーションで少しずつ産業奨励館の姿に戻っていく映像を午後八時前から流した。満潮とともに川面にくっきりと浮かび上がった。

 市民グループなど四団体が開く「8・5ヒロシマ劇場」の一環で、音楽会や船上スクリーンを使った映画の上映もあった。(新宅愛)

【写真説明】原爆ドーム前を流れる元安川の川面に浮かび上がった産業奨励館の映像=5日午後9時55分(撮影・浜岡学)


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