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平和記念式典で平和の鐘をつく遺族代表 黒田由希子さん(32) '07/7/24

 広島市の平和記念式典で八月六日、遺族代表として鐘を打つ。「祖母をはじめ多くの原爆犠牲者への追悼の気持ちを込めたい。同世代の人たちが、平和に思いを巡らせるきっかけにしてくれれば幸いです」。市役所で二十三日あった記者会見で、背筋をぴんと伸ばし、緊張気味に語った。

 高校三年の時に亡くした祖母は、爆心地から約二・五キロの東区牛田南の自宅で被爆した。当時、妊娠八カ月。父を身ごもっていた。

 「幼い伯母の手を引き、身重の体で裏山に逃げたと聞いた。市内で被爆した人が集まってきて、ひどい光景だったようです」。小学生のころ、何度せがんでも断片的な話しかしてくれなかった祖母の様子から、子ども心に壮絶な過去を察した。父が十二歳の時に祖父が他界。「白いご飯など食べられなかったと祖母がこぼしていた。戦後も随分、苦労したはずです」

 生まれた時から祖母と同居し、自然と平和への関心が芽生えた。鮮明に記憶しているのは小学校高学年。教諭に勧められ、原爆ドームそばでダイインを経験した。「すごく暑かった。被爆した人はもっと暑かっただろうと痛感しました」

 その後は八月六日も、せわしない日常に溶け込む。「平和について真剣に考える時間を持たなくなった」と振り返る。「これから平和をどう守るのか。若い世代が考えないといけない」。遺族代表は、思いを新たにするきっかけとなった。

 父も「頑張れよ」と励ましてくれた。その思いも背負い、平和記念公園(中区)の原爆慰霊碑前で、祈りの鐘を打つ。会社員。東区在住。(田中美千子)

【写真説明】「同世代が平和考えるきっかけに」と話す黒田由希子さん


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