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水彩画に残す被爆建物 広島市安芸区の藤登さん 平和願い広島・長崎巡る '07/7/31

 広島と長崎にある被爆建物と被爆遺構を水彩画で描き残そうと、広島市安芸区矢野西の藤登弘郎さん(71)が絵筆をふるっている。「失われゆく被爆の“証人”を、自分なりの方法で後世に残したい」。スケッチに一筆一筆祈りを込めて8・6を迎える。

 暗やみが地下の壁に広がる旧中国軍管区司令部(広島城)、首が取れた浦上天主堂前の聖像(長崎市)…。春から広島、長崎両市の被爆建物など計六十六カ所を歩いた。

 広島市中区の容器製造会社では工場に明治期のれんが壁が残る。大正期のアーチと白壁がモダンな南区の旧住友銀行東松原支店、同区の旧第一国民学校(段原中)は「再開発で壊される」と聞いた。六月に訪れた長崎市では、二日間で浦上天主堂、旧城山国民学校など十五カ所を巡った。

 水彩画を始めて十五年になる。全国の近代建築や歴史ある町並みをスケッチし、絵画を通じて各地の歴史遺産の継承を願うなか、地元の被爆建物が気になり始めた。「軍都広島の近代化遺産は同時に被爆建物でもある。形あるうちに記録し、若い人に関心を持ってもらえたら」と思う。

 崩れそうな壁面やすすけたガラスに手を当て「熱かったでしょう」とつぶやく時も。「建物を残そうとする方たちの努力に頭が下がった。描くことで平和への祈りとしたい」。この夏は懸命に筆を走らせる。(片山明子)

【写真説明】広島と長崎の被爆建物を水彩画に描き残している藤登さん


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