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東京の劇団、女学生の記憶を被爆電車で上演 元生徒ら40人鑑賞 '07/7/29

 第二次大戦末期、広島市内で電車を動かした女学生の青春を描く演劇「桃の実」が二十八日、市内を走る被爆電車内で上演された。広島電鉄(中区)が設けた旧家政女学校で学んでいた十四、十五歳の少女の記憶が、六十二年の時を超えて乗客たちに伝わった。

 被爆電車での演劇上演は初めて。東京の演劇集団「モケレンベンベ・プロジェクト」が企画した。広電本社から横川駅で折り返す約一時間のコース。貸し切りにした被爆電車に、同校の元生徒八人を含む観客約四十人が乗車した。

 同校は、戦争で男手が少なくなった広電が一九四三年に開設。地方から集まった少女たちは、食料不足や不慣れな寮生活に耐えつつ、車掌や運転士として軍都広島の交通を担った。勉強に音楽、乗客との淡い恋。そんな暮らしは四五年八月六日に一変した。

 藤沢弥生さんら三人が、原爆で傷つきながらも救援や復興に奔走する女学生を熱演した。途中で謎の男が乗り込むなど動く電車ならではの演出もあった。

 同校の二期生だった中区基町の増野幸子さん(77)は「よく調べてあり、楽しかった業務を思い出した。でも、被爆後の地獄絵図は忘れられない。つらくても語り伝えなくては」と涙ぐんだ。

 都電を主な舞台にしてきた「モケレ―」が、「チンチン電車と女学生」(堀川恵子・小笠原信之著)を原作に劇化した。昨年東京で初演し、今年は長崎も合わせた三カ所を巡る。

 二十九日も公演し空席は午後二時開演分のみ。Tel090(1731)8133。(片山明子)

【写真説明】広島市内を走る被爆電車内で上演された原爆劇「桃の実」(撮影・山本誉)


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