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被爆1ヵ月廃虚の映像 日本映画社撮影か 爆心近くで遺体を焼却 '07/8/2

 原爆による広島市の惨状を翌月の一九四五年九月五日に記録した動画が現存していた。爆心地近くの本川国民学校での遺体焼却など生々しい光景を収めており、大戦中にニュース映画を製作した「日本映画社」が撮影した可能性が高い。中国放送(RCC)が所蔵し、二日夕に初放送する。

 16ミリフィルムに複製されていた五分四十五秒の映像を中国新聞社が原爆資料館と検証し、撮影場所や経緯を突き止めた。

 映像は、トラックの荷台からカメラを回し、焼き尽くされた縮景園から福屋を経て、路面電車の残骸(ざんがい)が傾く相生通り沿いの廃虚を移動撮影し、県産業奨励館(原爆ドーム)をとらえる。

 さらに、「救護病院」と書いた板をコンクリート校舎につるした本川国民学校、運動場でむしろをかぶせ遺体を焼く場面を写す。墓石も無残な国泰寺、被爆二日後に比治山国民学校に設けられた「迷兒(まよいご)収容所」を収め、最後に「撮影九月五日」の手書き文字が表れる。

 撮影場所は、昭和天皇が広島へ派遣した永積寅彦侍従(九四年死去)が九月三日に視察した行程と重なる。日映が同行し、侍従が雨の爆心地一帯を歩くニュース映画は同二十二日に公開されている。

 今回見つかった映像は、トラックを調達した撮影や、侍従が視察した本川、比治山国民学校でも撮影していることから、日映の関係者が晴天となった五日に撮り直したとみられる。

 RCCによると、テレビ放送を開始した五九年以来の所蔵フィルムを整理した際、「原爆投下直後実写」と箱書きされた16ミリフィルムが見つかった。入手経路は不明という。二日午後六時十六分からの「イブニング・ニュース広島」で放送する。後日、全国放送する予定。(編集委員・西本雅実)

【写真説明】RCC所蔵の16ミリフィルムに写っていた原爆ドームと本川国民学校の奉安殿(右)。同校には被爆翌日から陸軍衛生隊が「救護病院」を設け、遺体も焼却された


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