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平和公園一人立つ 胎内被爆の三登さん、ガイド1年 '07/8/2

 広島市中区の平和記念公園で組織に属さず、ボランティアガイドをする男性がいる。元高校英語教員三登浩成さん(61)=府中町。ほぼ毎日公園に立ち、外国人観光客らに声を掛け、一緒に慰霊碑や被爆建物を巡る。無料案内は先月二十九日で丸一年になった。

 胎内被爆者の三登さんは反戦反核を訴える自作Tシャツを身に着け、悪天候の日を除き原爆ドームのそばに立つ。「案内しましょうか」。日本語や英語で声を掛け、碑の由来や込められた思いなどを解説している。

 修学旅行や団体からの要請を受けてガイドを派遣する組織はあるが、ふらりと訪れた個人客が気軽に頼めるガイドはいなかった。教員を退職後、一人で活動を始めてみるとニーズが高いことを実感した。

 声を掛けて断られることはほとんどないという。案内した人の紹介で三登さんを頼ってくる人も出てきた。これまで、ざっと四十カ国・地域の約六百二十団体、計二千四十人のガイドをした。

 案内する際、自身の被爆者健康手帳を見せる。被爆一カ月後に亡くなった祖父や体験をいっさい語らなかった父、最近になってようやく手記をまとめた母のことを話すことで被爆者の心情を伝える。祖父や父の遺影も見せる。「家族の話をすれば、身近に感じてもらえる」からだ。

 一人で始めた活動に広がりも出始めた。二月には友人で、父親が被爆した元会社員永原富明さん(60)=呉市=もデビューした。「涙を流して真剣に聞いてもらえることもあり、うれしい」と永原さん。

 若者からは平和への決意を書いた礼状や作文が届く。三登さんは「未来を担う若者に過去を学んでほしい」と話し、案内仲間が増えることを願っている。(森田裕美)

【写真説明】平和記念公園を訪れた人を案内する三登さん(右から2人目)と永原さん(右端)


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