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救いの手遠き海外 被爆カリブ移民の故徳田さんに国が葬祭料 '07/8/4

 カリブ海のドミニカ共和国に移民し、二〇〇四年に亡くなった徳田多智子さんの被爆者葬祭料が昨年度、支払われた。同国日本語学校の校長時代に徳田さんと知り合い、葬祭料申請に尽力した三次市三良坂町の福政康夫さん(76)にこのほど、日本から支払いがあったことを知らせる便りが届いた。

 広島市の広島赤十字病院の看護師だった徳田さんは、下宿で洗濯中に被爆した。二年後に結婚。一九五九年、夫とドミニカ共和国に渡った。福政さんが九三年、日本語学校に赴任したときは、徳田さんは夫とクリーニング店を営んでいた。店を訪ねると徳田さんにかしわもちや赤飯を勧められたという。

 二年間の任期を終えて日本に戻った福政さんが、同国で懇意にしていた倉橋島出身の矢島厚武さん(62)から、徳田さんの死亡を知らされたのは二年前。七十九歳だった。徳田さんは被爆者健康手帳を取得したが、「持っていても役に立たない」と話していたという。福政さんは「せめて葬祭料だけは遺族の方に」と、県に申請用紙を取りに行き、矢島さんを通じて徳田さんの四男の医師周さん(44)に申請の仕方を伝えた。

 連絡もなく、頓挫したと思っていた七月中旬に矢島さんから「十九万三千円相当が振り込まれた」との手紙が届いた。福政さんは安堵(あんど)するとともに、「被爆者のための制度があるのに、外国にいるために日本政府の怠慢で、権利が行使できないもどかしさがある。被爆者対策は手厚く対応するべきだ」と強調した。

 二〇〇六年度末までに、在外被爆者遺族から県に二十件、広島市には七十八件の葬祭料申請があり、支払っている。(衣川圭)

※在外被爆者の葬祭料※

 2005年11月末、被爆者援護法に基づく各種手当とともに、来日せずに在外公館を通じて申請可能になった。2000年11月30日以降に亡くなった被爆者の葬祭をした人も支給対象。額は死亡の年度で変動。

【写真説明】徳田さんたちとの思い出を語る福政さん


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