原爆の惨禍から六十二年。広島に六日、また鎮魂の朝がめぐってきた。午前八時から広島市中区の平和記念公園で、原爆死没者慰霊式・平和祈念式（平和記念式典）が営まれ、被爆者や遺族らが犠牲者を悼み、核兵器なき世界の実現へ思いを新たにする。

　この一年に亡くなったり、新たに死亡が確認されたりした人は五千二百二十一人。原爆死没者名簿に記載された被爆者は二十五万三千八人になった。式典では、秋葉忠利市長と遺族代表二人が、「氏名不詳者　多数」と書いた名簿を含む計九十一冊を原爆慰霊碑に納める。

　原爆投下時刻の八時十五分、遺族代表の黒田由希子さん（３２）＝東区＝と、こども代表の天満小六年惣田亮介君（１２）＝西区＝が「平和の鐘」を鳴らし、参列者は一分間の黙とうをささげる。秋葉市長は平和宣言で、膨大な量の核兵器備蓄・配備や拡散の加速に危機感を示し、「人類の意志として核兵器廃絶を呼び掛ける」と決意表明する。

　続いて、こども代表の五日市観音西小六年森展哉君（１２）＝佐伯区＝と、東浄小六年山崎菜緒さん（１２）＝東区＝が「平和への誓い」を読み上げる。

　初めて参列する安倍晋三首相と、藤田雄山広島県知事があいさつ。国連の潘（バン）基（キ）文（ムン）事務総長のメッセージをセルジオ・ケロス・ドアルテ軍縮室上級代表が代読する。

　各国来賓は、過去最多だった昨年の三十五カ国を上回る四十二カ国の大使や参事官が出席。核兵器保有国からはロシアの一等書記官が参列する。

　式典は例年と同じ四十五分間。「ひろしま平和の歌」の合唱で締めくくる。

　公園の内外に点在する碑でも学校や同窓会、職場単位の慰霊の集いが続き、一帯は終日、祈りに包まれる。市は今回初めて原爆資料館本館下の式典本部横に「折り鶴コーナー」を設け、会場を訪れた外国人らにボランティアが折り方を教えて、ヒロシマの願いを発信する。（林仁志）

【写真説明】参拝の人波が途切れることなく続く原爆慰霊碑。広島はきょう原爆の日を迎える（撮影・坂田一浩）