中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索
心に染みる「被爆遺言」 原爆絵本モデルの東広島の故澤田さん '07/8/6

 被爆体験を題材にした絵本のモデルで、先月、七十八歳で急死した東広島市河内町の桐(きり)げた職人澤田満明さんが、亡くなる四日前に残した証言ビデオが五日、広島市中区であった「広島市民平和の集い」で初公開された。声を振り絞り「戦争ほどみじめなことはない」と語る澤田さんの「遺言」は訪れた人たちの心に染み渡った。

 当時、国鉄職員だった澤田さんは仁方駅(呉市)に勤務し、列車で次々に運ばれてくる被爆者を救護した。原爆投下から二日後、広島市に入り被爆した。「お兄ちゃん、お水をくださいって、のどから絞り出すような声で子どもが言うんです」。ビデオで、澤田さんはその時の様子を沈痛な表情で語る。

 証言ビデオは、澤田さんの被爆体験も収められた絵本「語りつぎお話絵本 せんそうって なんだったの? 原爆・沖縄」を今年春に出版した学習研究社(東京)が企画した。

 澤田さんのビデオは先月二十二日、東京であったげたの展示即売会で収録した。背筋を伸ばし、カメラを正面に見据えた澤田さんは「この世に、人間同士が争う悲しい状態があってはいけない。文字から、絵から、真剣に考えてほしい」と訴えた。澤田さんは収録の四日後に亡くなった。

 収録に立ち会った同社の宮本康之編集長(36)は「声にも張りがあって元気だったのに…。澤田さんの『伝えたい気持ち』はしっかりと受け継ぎました」として、今後、全国で上映していく。

 最前列でビデオを見た植園澄子さん(81)=広島市南区=は「私も金輪島(南区)で被爆者を救護した体験を思い出し、涙が出てきた。よく話してくれました」と目頭を押さえていた。(石川昌義)

【写真説明】亡くなる4日前に収録された澤田さんの証言ビデオを見入る集いの参加者


MenuTopBackNextLast