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核廃絶は人類の意志 被爆62年式典で広島市長平和宣言 '07/8/7

 原爆投下から六十二年の六日、広島市中区の平和記念公園で、原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)が営まれ、参列した四万人(市発表)はあまたの犠牲者に哀悼の意をささげた。秋葉忠利市長は平和宣言で、核兵器拡散など危機的な現状を指摘しつつ、「二十一世紀は市民の力で問題解決できる時代」と断言。「人類の意志として核兵器廃絶を呼び掛ける」と誓った。

 式典前の通り雨が木々の緑を洗い、柔らかな光が雲間から見え隠れする公園に慰霊の調べが流れる。午前八時、開式し、秋葉市長と遺族代表二人が原爆慰霊碑に原爆死没者名簿を納めた。

 この一年に亡くなったり、死亡が確認されたりした被爆者は五千二百二十一人。名簿に載った名前は二十五万三千八人となり、冊数も二冊増えて九十一冊になった。

 原爆が投下された八時十五分、遺族代表の黒田由希子さん(32)=東区=と、こども代表の天満小六年惣田亮介君(12)=西区=が「平和の鐘」をついた。参列者は一分間黙とうし、あの日息絶えた犠牲者、悲願の核兵器廃絶を見届けることなく亡くなった人々を悼んだ。

 平和宣言に立った秋葉市長は「核兵器のない地球を未来の世代に残すため行動する」と決意を表明。膨大な核兵器の備蓄や配備、拡散の加速を危機ととらえる一方で、国際政治を動かそうとしている市民の活動に期待を寄せた。体験を語り続けた被爆者の功績にも言及し、労苦をたたえた。

 日本政府には「世界に誇るべき平和憲法をあるがままに順守、米国の誤った政策に『ノー』と言うべきだ」と迫った。

 こども代表の五日市観音西小六年森展哉(ひろき)君(12)=佐伯区=と東浄小六年山崎菜緒さん(12)=東区=も「平和への誓い」を読み上げた。

 各国来賓として、今年は四十二カ国の大使や参事官たちが出席。最多だった昨年の三十五カ国をさらに上回った。

 初めて参列した安倍晋三首相は「広島、長崎の悲劇は、地球上のいかなる地においても繰り返してはならない」と強調。被爆国の経験を国際社会に語り継ぐ考えを表明した。(林仁志)

※平和宣言骨子※

 ●少数の指導者が被爆者のメッセージに背を向けている結果、核拡散が加速し、人類は滅亡の危機にひんしている。

 ●二十一世紀は市民の力で問題を解決できる時代。市民とともに都市が立ち上がり、国際政治を動かそうとしている。

 ●世界中の市長が二〇二〇年までの核兵器廃絶を目指して活動している。今年十月には「都市・自治体連合」総会で、人類の意志として核兵器廃絶を呼び掛ける。

 ●日本政府は、平和憲法をあるがままに順守し、米国の時代遅れで誤った政策に「ノー」を言うべきである。

 ●「黒い雨降雨地域」や海外の被爆者も含め、高齢化した被爆者の実態に即した援護策の充実を求める

【写真説明】式典を終えた平和記念公園。原爆慰霊碑には参拝や花をささげる人の列が途切れることなく続いた=6日午前9時(撮影・室井靖司)


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