中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索
被爆者の肖像画、英へ 広島市立大生ら制作 '08/7/19

 ▽10年夏に公開計画

 あの日の体験を聞きながら、広島市立大(安佐南区)芸術学部の学生が描き続けてきた被爆者らの肖像画が近く、目標だった百点に達する。モデルの内面に迫る若い感性に英国の大学教授が注目し、被爆六十五周年の二〇一〇年夏に、ロンドンで公開する計画が進んでいる。

 肖像画の制作は〇四年に始めた同学部のプロジェクト。学生らが各自で被爆者や被爆二世、三世のモデルを探し、まず、話にじっくりと耳を傾ける。それから写真を基に、歳月を刻む表情を写実的にキャンバスに描く。学生や卒業生ら約五十人が取り組んできた。

 三年前に作品の一部を学内で初めて展示。来日中に偶然、訪れた英キングストン大の美術担当教授が目にし、被爆六十五年にちなむ六十五点の貸し出しを要望してきた。ロンドン大のギャラリーに飾ってモデルや制作者を数人ずつ招待する意向も示し、市立大側も協力する方針だ。

 指導した森永昌司准教授(48)は「被爆者と真剣に向き合い、歩んだ道や抱えてきた思いを作品に反映できた」と振り返る。大学院生の小勝負(こしょうぶ)恵さん(23)は授業中に被爆し、友人を失った男性を描いた。「重い過去を語ってくれた被爆者の内面を描き出そうと、数カ月かけて取り組んだ。体験を共有してもらえればうれしい」

 肖像画はモデルの証言とともに三十一日から八月十日まで同大芸術資料館で六十点を、八月一日から二十四日まで廿日市市のはつかいち美術ギャラリーで四十点を公開する。(田中美千子)

【写真説明】完成した肖像画の一部を前に、英国での公開に胸を膨らませる森永准教授(左)と学生たち(広島市立大)


MenuTopBackNextLast