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子どもが見た原爆を絵本に 早坂暁さん企画 出版へ '08/7/24

 広島市内の二人の被爆者が子どもの視点で原爆を描いた二冊の絵本が近く全国出版される。「夢千代日記」で知られる作家早坂暁さん(78)=東京都=が二人の描いた絵に目を留め、企画した。英訳も添え、世界に向けて原爆の悲惨さを訴える。

 著者は西区の名柄尭さん(74)と、中区の河野きよみさん(77)。東京・勉誠出版から「ヒロシマ原爆の絵日記 あの日を、ぼく(わたし)は忘れない」のタイトルで出版する。

 名柄さんは西区の己斐国民学校(現己斐小)で被爆。炎に包まれる市街地を見た記憶や、校庭に遺体を焼く穴が残ったまま授業が再開した様子などを、十七枚で表現した。

 河野さんは原爆投下翌日、姉二人を捜すため母とともに市北部から中心部に。病院の花壇で同じぐらいの年齢の中学生の遺体が積み重なっていた光景など二十枚を描いた。

 「多感な少年が未曾有の惨事をどう受け止めたのか伝えたいと思って描いた」と名柄さん。河野さんも「一枚ずつ描くたびに涙が出た」と言う。自らの記憶を子ども向けにつづる文章を作品に添えた二人は「若い世代に当時の少年少女がどう感じたのかを知ってほしい」と願っている。

 絵本のきっかけは、二人が二〇〇二年に原爆資料館(中区)などが公募した「原爆の絵」に寄せた作品。早坂さんが目に留め昨夏から書き下ろしの絵本の出版を働き掛けた。早坂さんは「核保有国の言葉に訳し世界中で読んでほしい」と話し、シリーズ化も検討する。二冊はともに約五十ページ。各二千部を発行し、千八百九十円。(新宅愛)

【写真説明】収録される作品を前に、絵に込めた思いを語り合う名柄さん(左)と河野さん(撮影・藤井康正)


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