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広島市立大に平和ポスター託す 被爆者デザイナー故片岡脩さん制作 '08/7/26

 広島市出身で被爆者のデザイナー、故片岡脩(しゅう)さん(一九三二―九七年)制作のポスター百点余がこの夏、広島市立大の芸術資料館に寄贈された。原爆のイメージを即物的に描かず、「LOVE」など文字の図案化によって平和希求と鎮魂を表現する作風。地元にこれほどまとまった数のコレクションはなく、同大は公開も検討している。

 片岡さんは旧制広島一中(現国泰寺高)時代に被爆、父と兄を失う。後遺症に苦しみながらも東京芸大を卒業しデザイナーに。愛知県立芸術大教授も務めた。八四年、平和ポスター百種類の作品を描くことに着手。国内外で精力的に展覧会を開いたが、七十四作品を完成させた時点で亡くなった。

 寄贈されたのは五十三作品で計百六枚。オフセット印刷のB1判で状態もよい。広島県立美術館と広島市現代美術館が約四十作品ずつ所蔵していたが、寄贈分は両館の未収蔵作を含む。片岡さんの妻恒子さん(73)=東京都=が「大切に保存、活用してくれる機関に」と、広島市立大へ贈った。

 青や白の涼やかな色彩と墨書の対比が鮮烈な「水ヲクダサイ」、般若心経と「炎」の字の組み合わせが惨状を想起させる作…。きのこ雲やハトといった直接的なイメージはない。奥深い悲しみや希望を表現している。

 同大芸術学部の大井健次教授(現代表現)は「作家の人生と切り離せない作品群。戦争や原爆に対する多様なアプローチを見せ、思いの強さが感じられる」と評価する。

 同大は制作過程や変遷の研究を進め、教育現場にも活用。新収蔵品展での公開を検討している。(田原直樹)

【写真説明】広島市立大に寄贈された片岡さんの平和ポスターに見入る大井教授(右)ら


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