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核廃絶、世界の声に 被爆64年式典 '09/8/7

 ▽広島市長、平和宣言でオバマ演説を支持

 米国による原爆投下から64年となった6日、広島市中区の平和記念公園で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)が営まれ、昨年を5千人上回る5万人(市発表)が参列した。秋葉忠利市長は平和宣言で「私たちの世代が核兵器を廃絶しなければ、次の世代への最低限の責任さえ果たしたことにならない」と訴え、2020年までの廃絶実現に向け「Yes we can」(絶対にできます)と英語で締めくくった。

 灰色の雲が夏の日差しを和らげる。せみ時雨が降り注ぐ中、爆心地に近い公園で午前8時、式典が始まった。秋葉市長と遺族代表2人が原爆死没者名簿を原爆慰霊碑に納めた。

 この1年に亡くなったか、死亡が確認されたのは5635人。名簿は2冊増の計95冊、犠牲者は26万3945人となった。長崎で被爆し、遺族が広島への奉納を希望する4人の名を記した1冊も初めて納めた。

 午前8時15分。原爆投下と同じ時刻に、遺族代表の西村知子さん(35)=安佐南区=と、こども代表の高南小6年来島圭介君(11)=安佐北区=が平和の鐘を鳴らした。参列者は起立し、黙とうした。

 4月、オバマ米大統領がプラハ演説で「核兵器のない世界」への実現努力を明言した。

 秋葉市長は平和宣言で大統領支持を表明。廃絶を願う多数派市民を「オバマジョリティー」と称し、世界へ力を合わせようと呼び掛けた。20年までの核兵器廃絶への道筋を示す「ヒロシマ・ナガサキ議定書」が、来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で採択されるよう全力疾走する、と誓った。

 こども代表の矢野小6年矢埜哲也君(12)=安芸区=と、五日市南小6年遠山有希さん(11)=佐伯区=が「平和への誓い」を力強く読み上げた。

 41都道府県の遺族代表、昨年より4カ国多い59カ国の代表が参列。麻生太郎首相は「日本が今後も非核三原則を堅持し、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向けて、国際社会の先頭に立っていく」と決意を述べた。(長田浩昌)

 ■平和宣言骨子

 ●政府は「黒い雨降雨地域」や海外の被爆者も含め高齢化した被爆者の実態に即した援護策を充実。省庁の壁を取り払い、被爆者の悲願達成のため2020年までの核兵器廃絶運動の旗手として世界をリードすべきだ。

 ●オバマ米大統領は「核兵器のない世界」の実現努力を明言。世界の大多数の市民の声である核兵器廃絶に大統領が耳を傾けたことは「廃絶されることにしか意味のない核兵器」の位置付けを確固たるものにした。

 ●加盟都市が3千を超えた平和市長会議は「ヒロシマ・ナガサキ議定書」の核拡散防止条約(NPT)再検討会議での採択に向け全力疾走している。採択後の筋書きは2020年までの核兵器廃絶を想定。7日から長崎市で開く総会でさらに詳細計画を策定する。

 ●国連に市民の声が直接届く仕組みを創(つく)る必要がある。200都市からなる国連の下院の創設も1案だ。

【写真説明】式典会場で燃え続ける「平和の灯」。秋葉市長の平和宣言終了とともにハトが放たれた=6日午前8時24分(撮影・今田豊)


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