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被爆地広島「当然だ」 久間防衛相辞任受け '07/7/4

 ▽首相責任問う声も

 原爆投下を「しょうがない」と発言した久間章生衆院議員(長崎2区)が防衛相を辞任した三日、被爆地広島では「原爆投下の正当化は断じて許せず、辞任は当然」との受け止めが広がった。被爆から六十二年の「原爆の日」が近づくなか、体験の風化が発言の背景にあるのかと、やるせなさを覚える被爆者も。「真っ先に罷免すべきだった」など安倍晋三首相の責任を問う声もある。

 平和団体と連名で久間氏の罷免を求めていた広島県被団協の金子一士理事長(82)は「参院選を前に、与党内の批判に押し出されたように見える。心から反省するなら弁解せず、身を処すべきだった」。もう一つの県被団協(坪井直理事長)の池尻博副理事長(82)も辞任を当然とし、その上で「原爆や戦争の記憶が風化しているような政治家の発言が続く。八月六日の原点を絶対に忘れないでほしい」と訴えた。

 秋葉忠利広島市長は市役所で緊急会見し「被爆者の人生やメッセージを軽んじる姿勢から発言が生まれた。過去を記憶できない者は過去を繰り返す」と厳しい口調で非難。久間氏を当初擁護した安倍首相の姿勢を「引き留めるようなことをやらなければ、もっと(辞任は)早かった」と批判した。

 秋葉市長は四日に首相官邸を訪れて遺憾の意を伝え、閣僚による不適切発言の防止を安倍首相あてに要請する。

 発言の際に遺憾の意を表明した藤田雄山広島県知事は「被爆地の広島、長崎をはじめ全国からの声を受けて、大臣が判断されたものと思う」との談話を出した。

 ▽「選挙対策か」「内閣の見解を」 中国地方から街の声

 中国地方の街角でも三日、辞任を当然視する声が広がった。

 広島市中区の会社員佐々木敦さん(35)は「これまでの発言を聞いていると、(自殺した)松岡利勝前農相の場合とは違って、辞めさせられたのでは」と受け止める。

 三原市の会社員石原重美さん(51)は「被爆地である長崎県出身の閣僚なのに…。品位がない」とあきれ顔。祖父が被爆者で、幼いころから被爆体験の重みを感じてきたという松江市の大学生政本和哉さん(18)は「国を動かす者の発言ではなかった」と言い切った。

 参院選公示を九日後に控えた辞任。広島県府中町の無職丹羽敏子さん(75)は「選挙対策で辞めざるを得なかったのでしょうね」と冷ややかにみる。

 安倍首相の対応について、岩国市のフリーライター岸かおるさん(47)は「首相は後手に回っている。国民の視点に立っていない」と批判。岡山市の自営業武内和子さん(53)も首相の任命責任を指摘した上で「大臣を代えるだけでは解決しない。過去の戦争に対する内閣の見解を国民に示してほしい。選挙の判断基準にもなる」と求めた。

【写真説明】久間防衛相の辞任を伝える電光ニュースを見上げる通行人たち(3日午後3時、広島市中区の八丁堀交差点)


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