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イランに平和施設誕生 広島との交流契機 '07/7/7

 イランの毒ガス被害者と被爆地広島の市民の交流をきっかけに、首都テヘラン市の公園に、大量破壊兵器の廃絶と平和を願い、毒ガス被害者を慰霊する記念碑と、被爆の惨状を訴える写真などを展示した平和資料館が誕生した。イランが核開発をめぐり国際的な孤立を深める中、草の根交流が大きな実を結んだ。

 ▽毒ガス被害者慰霊の記念碑

 テヘラン市と現地の毒ガス被害者団体が、イランの反化学兵器運動記念日である六月二十九日に合わせ、市中心部の市の公園に完成させた。記念碑は高さ十一メートル。石組みの台座にハトの彫刻を据えた。側面には、ペルシャ語や日本語、英語など六カ国語で「世界中の人類が平和で平穏な生活を営める日まで、平和のメッセージを送り続ける」とのメッセージをつづった飾り板を掲げている。

 総工費約三百六十万円のうち六十万円は、広島県内の四十六人・団体が寄せた。

 ▽被爆の惨状を伝える資料館

 碑と併せ、公園内にある市の分庁舎を改修して平和資料館が開館した。広島の惨状を記録した写真ポスター約三十点や毒ガス被害を伝える写真パネルなどを並べている。

 イランでは、イラン・イラク戦争(一九八〇―八八年)中、毒ガス攻撃で約六千人が死亡し、五万五千人が後遺症に苦しんでいる。広島市の特定非営利活動法人(NPO法人)「モーストの会」(津谷静子理事長)が二〇〇四年から現地の被害者団体と協力。イラン国内を巡って被害者の聞き取り調査をしたり、被害者を毎年、広島市の平和記念式典に招いたりしている。

 会員四人と現地の除幕式に出席した津谷さんは「国同士の和解の糸口を見つけるのが難しいなか、大量破壊兵器の悲劇を経験したヒロシマの市民だから受け入れてもらえた。ヒロシマの役割の重さを一層感じる」と話している。

 テヘラン市のモハンマド・ガーリーバーフ市長は除幕式で「平和行事をたくさん開催し、大量破壊兵器廃絶を願う気持ちを世界に訴えたい」と意欲を語り、現地の被害者団体は被爆地と協力しての原爆展の開催を計画しているという。(岡田浩一)

【写真説明】テヘラン市の公園に完成した記念碑。毒ガス被害者を慰霊し、大量破壊兵器の廃絶を願う(モーストの会提供)


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