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原点回帰 被爆地つなぐ さだまさし、8・9に広島市民球場で演奏会 '07/7/15

▽20年の区切り 新たな一歩

 長崎原爆の日である8月9日、広島市民球場(中区)でさだまさしが平和コンサートを開く。20年間、無料で続けてきた長崎でのコンサートを「切迫感が薄まった」と昨夏で終えた。「8・6、8・9の意味が忘れられつつある今、二つの被爆地をつなぐ歌を歌いたい」。広島で新たな一歩を踏み出す。

 「長崎から」無料コンサートの原点は、広島にあった。第一回広島平和音楽祭(一九七四年)を体験し「あの異様な熱気。広島の力を感じたね」。こんな催しを長崎でも、と考えてきた。

 約二十年前は映画制作で二十八億円の借金を抱えていた。「何もそんな時にと仲間は止めるし、売名行為と誤解されもした。だからこそ、必死な気持ちで舞台に立てた」

 ファンを前に、毎夏語り続けた言葉は「大切な人の笑顔を守るために何ができるか考えて」。

 共鳴した人から募金を集め「ナガサキ・ピースミュージアム」を開館。BEGINのように、触発されて平和イベントを開く後輩も現れている。

 「三万人を前に全力でやってきた。一方で、来年これより良いものができるかって不安も大きくなって」。回を重ね、取り組む自分の心の温度が下がったと判断した。

 二十年を区切りに、いったん幕を引くと宣言。長崎の対である広島での開催が「二十年間の満行」と覚悟を語る。

 市民球場の開場五十周年記念と重なったことも縁を感じる。広島東洋カープの選手らと親交があり、松山千春と草野球で対戦した場所だ。「市民が大切にしてきたチームの根拠地でしょ。一回きりのコンサートとしてふさわしいと思う」

 音楽活動はもとより、小説執筆や映画「眉山」にかかわるなどマルチプレーヤーぶりを増した。「ギターはうまくなった。歌は相変わらず下手だけどね」と笑わせる。ライブは「満腹にさせた上で土産まで持たせる、田舎のお接待のように」と、全力を尽くす。

 開催発表から約六万人の応募があり、満席。当日は自作の「広島の空」、「祈り」など長崎につながる歌を選曲した。加山雄三、BEGIN、アカペラグループのチキンガーリックステーキらが「けじめと連帯の舞台」に駆け付ける。雨天決行。(片山明子)

【写真説明】「音楽家として、平和を考えるゾーンへの呼び込み役を果たすだけ」と話すさだまさし


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