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「敵国」の象徴 米人形が被爆 広島の末友さん保存 原爆資料館で初公開 '07/7/19

 第二次世界大戦前に米国から広島市に届き、被爆した米国製の人形が原爆資料館(中区)に寄贈され、十九日から始まる「新着資料展」で初公開される。所有者で西区の被爆者末友智子さん(78)がずっと保管してきた。「敵国文化の象徴が軍都広島で被爆した事実は、これまで知られていなかった」と資料館は驚いている。

 金髪で青い瞳の人形は、全長四十八センチ、セルロイド製。「シャーリー・テンプル人形」と呼ばれ、同名の米国人子役を模してデザインされ、一九三〇年代に全米に広がった人気グッズだ。

 太平洋岸のカリフォルニア州に単身で移民していた末友さんの父、明さんが三五年、久地村(現安佐北区)に残した娘の小学校入学祝いに贈った思い出の品という。

 米国の文化が「敵性」とみなされる中、四三年に母、弟たちと一緒に爆心地から約二・三キロの皆実町(現南区)の家に移った時も捨てずに持っていた。原爆で自宅は全壊。がれきの中から見つけた際、巻き毛は乱れ、ドレスの胸にあったブローチはなくなっていた。

 原爆資料館の収蔵品には、被爆した人形は他に一つしかなかったという。末友さんは「日米両国の平和な時代と戦争を経験し、被爆したかわいそうな人形。見た人たちが平和について考えるきっかけを与えてくれれば…」と願っている。(門脇正樹)

【写真説明】<左>華やかな和服姿で真新しい人形を抱く末友さん(1936年1月、末友さん提供)<右>被爆し、ブロンドの巻き毛を乱しながら現存する人形


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