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反核世論国家超え形成 IPPNW日本支部の片岡事務総長 '07/7/20

 六月下旬にモンゴルであった核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の北アジア地域会議は、北朝鮮からの参加者も交え、北東アジア非核兵器地帯の推進について医師たちが意見交換した。会議の議長を務めた片岡勝子日本支部事務総長に、成果や今後の課題について聞いた。

 ―成果がありましたか。

 非公式会談も含め、踏み込んだ議論ができた。北東アジアの核をめぐる現状は周辺の核保有国も絡んで非常に複雑。だが日本には非核三原則があり、一九九二年に南北間で合意した朝鮮半島非核化宣言がある。悲観的とも言える「現実」を、こうした「建前」にどう合わせていくか。さまざまなステップをひざをつき合わせて話し合った。私は医師であって、外交や政治の専門家ではないので、被爆の実情を伝え、建前を現実化するための反核世論をつくるのが大きな仕事だと再認識した。

 ―一国で非核地位を宣言しているモンゴルで会議を開いた意味がありましたか。

 一国非核地位の実現にに尽力したジャルガルサイハン・エンフサイハン前国連大使が非公式協議で「北東アジア全体を一度に非核地帯にするとなると各国の政治的駆け引きになって難しい。それぞれがモンゴルのように非核宣言をしてはどうか」と提案した。その上で核保有国に、非核国への核使用を否定する「消極的安全保障」を働きかけようという。そういう方法もあると感じた。

 ―北朝鮮代表団とはどんな会談でしたか。

 被爆者は自国でケアできているというのが北朝鮮側の立場だが、こちらにもサポートする用意があると伝えた。だが、現地に出掛けるとなるとハードルは高そう。昨年の核実験については「自国を守る権利がある」と正当性を主張していたが、米国を非難する感じはなかった。公式な立場としては「朝鮮半島の非核化宣言は生きている」とも主張していた。少し風向きが変わっているように思えた。

 ―被爆国日本で開催予定の次回会議では何を目指しますか。

 まず北東アジア各国にそろって参加してもらうこと。また、日本支部内部でも核問題の受け止めには温度差があり、何らかの「てこ入れ」も必要と思う。被爆地の医師として、原爆や核実験が人体に及ぼす影響などを放射線医学の視点から伝えたい。各国の医師が国家間の問題を乗り越え、人間として核兵器に反対する。そんな運動につなぐことができるよう、アプローチを試みたい。(森田裕美)

【写真説明】「国家間の政治的問題を乗り越え、反核世論をつくりたい」と意欲を語る片岡さん


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