中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索
被爆地の絵に宿る友情 米の重藤さん、本川小児童と米牧師の交流映画化 '07/7/28

 広島市中区の本川小の児童が六十年前に描いた絵画や書をモチーフに、米ワシントンを拠点に活動する舞台芸術家の重藤静美さんが記録映画を制作している。八月上旬に広島を訪れ、関係者インタビューや被爆地の現状を収録。日米の平和交流をテーマに完成させる。

 本川小の児童の作品は四十八点あり、ワシントンのユニテリアン・オールソウルズ教会が保管している。被爆地の学校の文房具不足を知った牧師が一九四六年、原爆投下を称賛する米国内の世論に反発する思いもあって米国内で寄付を募り、広島市内の小学校に絵の具やクレヨンを贈った。その返礼として四七年、本川小から届いた。

 昨年、これらの作品に出会った重藤さんは、被爆前の町並みや元気に遊ぶ子どもたちが鮮やかに描かれた絵画に「被爆の爪跡が深い地で育つ子どもたちの希望が見えた」と心を揺さぶられた。重藤さんの母は郷里の三次市で教師をしていて、戦時中に受け入れた疎開児童が広島へ里帰りした際に原爆の犠牲になった、と悔やみ続けていたことも思い出したという。

 重藤さんらは「広島の子どもの絵 Seeds Of Hope(希望の種)プロジェクト」と名付け、傷みの激しい絵を修復。同時に、ドキュメンタリー映画の制作に取りかかった。

 すでに修復作業や米国側関係者の証言などは映像に収めた。八月には本川小の現在の姿を収録。同小卒業生で漫画「はだしのゲン」著者の中沢啓治さんらのインタビューも予定している。

 重藤さんは「日米の現代の子どもたちに、人間の友情、平和を祈る心について伝えたい」と意気込む。本川小の空間浩道校長も「六十年前の絵画に込められた平和への願いや希望を世界に発信できる」と喜んでいる。

 プロジェクトは国内に支援窓口「広島の子どもの絵を守る会日本事務局」を設けた。募金や当時の児童の消息情報を募っている。北村さんTel06(6942)5359。(森田裕美)

【写真説明】60年前の本川小児童が描いた絵。鮮やかで希望に満ちた作品が多い(広島の子どもの絵SeedsOfHopeプロジェクト提供)


MenuTopBackNextLast