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直ちに被爆者の救済を '07/7/31

 原告二十一人中十九人を原爆症と認定した熊本地裁判決は、厚生労働省が「科学的」と強調してきた審査の方針を「一応の考慮要素にすぎない」と退けた。参院選でも自民、公明の与党両党をはじめ圧倒的多数の政党が制度の見直しを公約に掲げた。既に結論は明白で停滞は許されない。司法の判断に沿って、直ちに被爆者を救済するべきだ。

 判決は、全国で過去五つあった判決に加え、内部被曝の影響をより広く認めた。さらに、骨粗しょう症、変形性ひざ関節症などを患う原告の訴えも認めた今回の判決を、原告側は「がん以外の多様な疾病も広く救済している」と評価した。司法の流れはすっかり定着したと言っていいだろう。

 国会も既に動いている。自民党が設置した厚労部会の小委員会は、八月中にも一定の方向性を打ち出した上で与党プロジェクトチーム(PT)に議論を移す方針だ。さらに、参院選では参院に会派を持つすべての政党がこの問題の解決を何らかの形で公約に盛り込んだ。国会の圧倒的多数が政府の方針の転換を迫ったことになる。民意は明らかだ。

 しかし、参院選で与野党が逆転したことで、政局が混乱する可能性もある。そうなると、せっかくの公約が置き去りにされる恐れもあり、結果的に厚労省の方針をあらためさせる圧力が弱くなりかねない。

 被爆者たちは「残された時間は少ない」として一刻も早く解決することを望んでいる。参院選後の政局に影響されて状況が停滞したのでは、何のための選挙であり、公約だったのかわからなくなる。できるだけ早く問題を解決することが政治の信頼を高めることになるし、厚労省は当然、それに答える義務がある。(金崎由美)


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