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首相の「政治決断」なるか 5日被爆者と面会 原爆症認定が焦点 '07/8/4

 安倍晋三首相が広島市の平和記念式典前日の五日、被爆者団体の代表と面会する。最大の焦点は原爆症認定基準の見直し問題だ。これに関連し、柳沢伯夫厚労相は三日の会見で「今までの基準を変更するとは聞いてないし、私どもも予定はない」と従来の方針を繰り返した。原爆症認定をめぐる集団訴訟で国側が六連敗し、与野党そろって問題の解決を公約する中、首相はどう答えるのか。早期の政治的解決に期待を寄せる被爆者は熱い視線を送っている。

 政府は参院選を受けた臨時国会の招集を七日に控え、六日の式典後に開かれる「被爆者代表から要望を聞く会」の首相欠席をいったんは決めた。だが、自民党の「原爆症認定を早期に実現するための議員懇談会」(河村建夫会長)の働き掛けで一転、広島入りする五日夕に被爆者団体の代表と面会することになった。

 六年ぶりとなる首相との直接対話には柳沢氏も同席する。被爆者団体は、原爆症認定制度の見直しや、米国の原爆投下を「しょうがない」とした久間章生前防衛相の発言に対する謝罪などを要望するとみられる。

 国の認定基準を否定する司法判断が相次ぐ中、各党は表現こそ違え、参院選の公約に「被爆者支援策の充実に向けた早急な検討」(自民)「『原爆症認定審査の方針』の廃止」(民主)などの救済策を盛り込んだ。自民党の「原爆被爆者対策に関する小委員会」も今月中に認定基準見直しの提言をまとめる意向だ。

 認定基準をどこまで緩めるかや、救済の幅を広げた場合の予算をどう確保するかなど課題は多いが、参院選を終えた今、救済拡大を政府に求める声は一層強まっている。

 こうした中で、柳沢氏は「首相が被爆者の方々と会う機会を考えているのは承知している」としながらも、基準の見直しに後ろ向きな姿勢に終始。熊本判決に控訴する方針もにじませた。

 集団訴訟を主導する日本被団協の田中煕巳事務局長は「原告が生きている間の一括解決には政治的解決しかない」と語り、被爆者団体の代表と面会する直前の厚労相の発言を「厚労省の(首相への)けん制ではないか」と話す。自民党内には「首相が直接面会する以上、解決に向けた何らかの言葉が聞けるのでは」との見方もある。司法、立法が基準の見直しに動いているだけに、行政のトップである首相の五日の発言が決定的な意味を持つ。(山中和久、荒木肇)

【写真説明】記者の質問に答える安倍首相(2日午後、首相官邸)


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