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原爆症基準見直し検討 首相、被爆者に表明 政治的解決へ一歩 '07/8/6

 安倍晋三首相は五日、広島市南区のホテルで被爆者団体の代表と懇談し、原爆症認定のあり方について「専門家の判断のもとに、見直すことを検討させたい」と表明した。被爆者の高齢化が進む中、原爆症認定をめぐる集団訴訟で国側が六連敗し、首相が認定基準の見直しに初めて言及したことで、政治的解決に向けた一歩を踏み出したといえる。

 広島市中区の平和記念公園で六日にある平和記念式典出席のため広島入りした安倍首相は、地元の被爆者七団体の代表と懇談した。首相と被爆者の直接対話は六年ぶり。

 安倍首相は原爆症認定基準の見直し検討の考えを示した上で「裁判は別として、高齢化する被爆者の切実な声に耳を傾けながら国として何ができるのか検討させたい」と述べ、一連の原爆症認定訴訟とは切り離して検討を進める考えを示した。

 米国の広島、長崎への原爆投下を「しょうがない」とした久間章生前防衛相の発言については、「被爆者の心を大変傷つける結果になり、大変申し訳ない」と陳謝した。非核三原則の堅持を強調し、「国連総会での核軍縮決議案の提出、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効に向けた働き掛けなどを積み重ねていく。こうした軍縮の積み重ねを通じて、核兵器の廃絶に向けて努力していく」と述べた。

 原爆症認定制度をめぐっては、国の認定基準を否定する司法判断が相次ぐ中、参院選で与野党がそろって問題の解決を公約。自民党の「原爆被爆者対策に関する小委員会」は今月中に認定基準見直しの提言をまとめる意向で、政治レベルで救済拡大を目指す動きが活発化している。これに対し、厚生労働省は「判定基準は科学的知見に基づいている」と後ろ向きな姿勢を崩さず、解決に向けた首相のリーダーシップを求める声が高まっていた。(山中和久)

※原爆症認定基準※

 爆心地からの距離を基に被曝(ひばく)線量を推定した上で、被爆者の性別や年齢などの要素を加え、病気が発症する確率を計る「原因確率」を用いる。被爆者側は「残留放射線や内部被曝の影響を過小評価している」と批判している。認定率は極端に低く、医療特別手当(月約14万円)受給者は、被爆者健康手帳所持者の1%に満たない。


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