中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索
「前進だ」「具体性ない」 被爆者ら反応複雑 '07/8/6

 「一歩前進だ」「具体策が見えない」―。国敗訴の司法判断が相次ぐ原爆症認定問題をめぐり、安倍晋三首相が五日、被爆地広島で初めて「見直し」に言及したことについて、首相と面会した被爆者団体や訴訟弁護団の間には複雑な反応が広がった。高齢化が進む被爆者が心待ちにする早期解決に向け、首相のさらなる指導力を求める声も上がった。

 「一番の収穫。私たちは何としてでも認定基準をやり直させようという気持ちがある。有意義だった」。広島県被団協の坪井直理事長(82)は声を弾ませ、見直し方針を評価した。

 安倍首相は当初、六日の平和記念式典後に広島市である「被爆者代表から要望を聞く会」の欠席方針を示した。しかし、地元の反発や、原爆症認定問題の解決に前向きな自民党議員らの働き掛けを受け、急きょ面会を設定した。欠席方針に反発していた一人の坪井理事長は、被爆者を前に「約束」した首相に対し「調子に乗って言ったとは言わせん」とくぎを刺す。

 一方、もう一つの広島県被団協の金子一士理事長(81)は「具体的な解決の道筋を示していない」と厳しい見方だ。「国が敗訴した熊本地裁判決に控訴するかどうかも明言を避けた。正面から答えず、無責任だ」と語気を強めた。

 原爆症認定集団訴訟に取り組む弁護団のメンバーも面会に同席した。やりとりを背後で聞いていた全国弁護団連合会の宮原哲朗事務局長は「首相として一歩踏み込んだ発言で評価できる。ただ『いつまで』という時期への言及はなかった」。

 広島高裁で係争中の訴訟で弁護団長を務める佐々木猛也弁護士は「国側敗訴が連続する司法判断に首相が追い込まれた。リーダーシップを発揮し、解決に全力を傾けないと被爆者の信頼を得られない」と指摘した。

【写真説明】被爆者団体との懇談会であいさつをする安倍首相(撮影・浜岡学)


MenuTopBackNextLast