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核廃棄まず英国で実現を CND執行委員デービッド・ウェブ氏に聞く '07/8/7

 英国政府は、戦略核システム「トライデント」を更新しての後継システム導入を打ち出し、英国下院が今年三月、政府方針を賛成多数で承認した。原水協などの原水爆禁止世界大会に参加している「核軍縮キャンペーン」(CND)執行委員デービッド・ウェブ氏(58)=リーズ市大教授=に、後継システムを不要とする理由などを聞いた。

 ―英国の戦略核システムを解説してください。

 特徴は、潜水艦発射弾道ミサイルだけということ。昨年発表された核戦略白書は、この潜水艦の退役時期を二〇二五年までとし、それまでに次世代型を用意するため、今年中に開発を決めなければならない、としている。しかし、本当にその日程が正しいのか、疑問が出ている。下院の投票でも、与党の労働党から異例の大量造反が出た。

 ―核の廃棄が可能ですか。

 核兵器を保有する米国やロシア、中国、フランスと比べ、英国は最も核兵器の廃棄を実現しやすい環境にある。近隣に敵対国がない。潜水艦搭載型しか持っておらず、保有核弾頭も二百と比較的少ないからだ。

 ―「テロ対策上も、最小限の核抑止力は必要」とする英国政府の見解にどう反論しますか。

 国内に潜伏するテロリストに核を使うのか。ばかげている。ある新聞社の調査では、回答した国民の65%がトライデント更新に反対している。世論はテロ対策と核を直結させて考えてはいない。

 将来も核抑止力を保つことは、核拡散防止条約(NPT)が定める締約国の核軍縮義務に違反する。政府は「潜水艦を四隻から三隻体制に減らし、核弾頭も二百から百六十に減らす」と主張するが、それで義務を果たしたとは言えない。

 ―トライデントが配備されているスコットランドのファスレーン海軍基地で反対運動が続いていますね。

 七月に日本人も逮捕されるなど日常的に逮捕者が出ているが、ほとんどは翌朝釈放され、起訴されない。非常に形式的だ。スコットランドでは大多数がトライデントに反対していることが背景にある。

 英国を、核保有五大国で初めて核廃棄を実現する国にしたい。そうすれば、続く国が出る。政府に方針転換させるタイミングは、まだ何度もある。(金崎由美)

 ※核軍縮キャンペーン(CND)※

 ロンドンに本部を置く欧州で最大級規模の反核運動団体。58年に設立し、会員は4万5000人。労働党の英下院議員が副議長を務めるなど、市民と政治の双方に影響力を持っている。

【写真説明】英国の戦略核の廃棄は可能と主張するウェブ氏


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