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遺志胸に平和の音色 戸坂中生が被爆ピアノ演奏 '07/8/7

 鍵盤をたたくと、六十二年前と変わらない柔らかな音色が響いた。東区の戸坂中の生徒たちが、被爆ピアノの演奏会を開いた。被爆死した持ち主の女学生の代わりに、平和への祈りを込めた。

 代表して四人がクラシック曲を奏でた。ピアノの側面には、原爆の爆風で砕けたガラスの破片が突き刺さったまま。あの日、動員先の八丁堀で被爆し、十九歳で亡くなった河本明子さんに思いをはせながら披露すると、全校生徒ら約七百人から大きな拍手がわいた。

 被爆ピアノは、保存していた両親の死後、母の知人で西区の日本語教師須藤とみゑさん(58)らの手で一昨年、修復されコンサートで復活した。同中に通う外国籍の生徒の日本語授業を須藤さんが担当しているのが縁で演奏会が実現した。

 三年西岡麻生さん(14)は、河本さんが戦中の混乱の中でも、思うように勉強できないのを悔しがっていたのを知り、「すごい」と感じたという。「多くの犠牲者が出る戦争はやってはいけない」。ショパンの「別れの曲」を弾き終え、ピアノからメッセージを受け取った。(武内宏介)

【写真説明】原爆の爆風で傷ついたピアノから、柔らかい音色を響かせる戸坂中の生徒


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