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「絶後の記録」自らに重ね 米在住のドボッシュさん '07/8/7

 被爆直後の広島市の惨状をルポした「絶後の記録」を読み感動した米ロサンゼルス在住のキンガン・ドボッシュさん(32)が六日、広島市中区の平和記念公園で、著者で元広島大教授の故小倉豊文さんの長女、三浦和子さん(74)=千葉県船橋市=から被爆体験の聞き取りをした。ドボッシュさんはかつて住んでいたルーマニアで革命に遭遇し、家族と離ればなれになった経験を持つ。三浦さんの話を元に、平和の尊さや家族の大切さを伝える映画の制作を目指す。

 映画会社に勤めるドボッシュさんは知り合いの薦めで英語版の「絶後の記録」を読んだ。著者の小倉さんが原爆で行方不明になった妻子の行方を求めて三日間、捜し回る様子を読み進める中、十八年前の自分の姿と重なった。

 ルーマニア革命が起こり、ハンガリー人のため迫害されるのを恐れた両親は、ドボッシュさんら子どもを残して一足先にハンガリーに出国。十カ月間、離れて暮らした。「悲惨な状況の中でも家族のきずなの大切さが身にしみた」と振り返る。

 三浦さんに詳しい話を聞こうと手紙を書き、原爆の日に広島で会えることになった。三浦さんは千葉県にとんぼ返りしなければならないため、聞き取りは日付が変わったころから始まった。

 家族が再会後、まもなくお母さんが亡くなったこと、一面の焼け野原で広島駅から宇品まで見渡せたこと…。懸命にメモを取るうち朝になった。

 映画化のめどは立っていないが、ドボッシュさんは二週間日本に滞在してさらに調査する。三浦さんは「訳が分からぬまま亡くなった人たちのためにも、過去の歴史を忘れてはいけない」と話し、協力していくつもりだ。(山成耕太)

【写真説明】夜を徹して三浦さん(右)から当時の話を聞くドボッシュさん(平和記念公園)


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