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「ゲン」世界に飛べ 英訳の浅妻さんが中沢さんと面会 '07/8/7

 漫画「はだしのゲン」を英訳している金沢市の市民団体代表浅妻南海江さん(64)が六日、広島市を訪れ、原作者の中沢啓治さん(68)に、英語版全十巻の完成を誓った。

 浅妻さんは平和記念式典に参列した後、中区にある中沢さんの事務所に向かった。「被爆者の恐怖、苦しみを身近に感じた。争いも核兵器もなくなるよう、ゲンを世界に羽ばたかせたい」。中沢さんが大きくうなずく。

 浅妻さんは一九九四年から、友人と二人で学生時代に学んだロシア語で「ゲン」を翻訳、二〇〇一年に全十巻を出版した。英訳ができる協力者を募って英語版も〇五年に四巻まで出した。今はスタッフ十五人と、年内に発行する五、六巻の編集作業に没頭している。

 神戸市出身。広島にも長崎にも住んだことはない。育児が一段落したころ、知人のロシア人が原爆の惨状をあまりに知らないことに驚き、子どもの愛読書だった「ゲン」の翻訳を始めた。続けるうち「語学勉強にもなる、との軽い気持ち」が変化してきたという。

 世界情勢は依然、不穏なまま。「誤った政治を変えるのは国民の力。彼らにヒロシマを伝えたい」と力を込める。「それが次世代に対する大人の責任でもあるから」。近年はフィリピン、トルコなどの希望者に編集ノウハウを教えてもいる。

 広島では商店街でビラを配るなど、英語版をPRした。中沢さんは「遠く金沢で動いてくれる人がいる。私も若者たちに核は絶対にいけん、と伝えたい」と思いを重ねた。(田中美千子)

【写真説明】翻訳版の「はだしのゲン」を手に、中沢さん(右)へ活動にかける思いを伝える浅妻さん(撮影・天畠智則)


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