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村の記憶CDに ヒロシマ救護の手記「戸坂原爆の記録」 '07/8/9

 原爆投下の直後、広島市東区戸坂地区(旧戸坂村)の住民が傷ついた市民らを救護した様子などをつづった手記「戸坂原爆の記録」を、市民団体メンバーの村上啓子さん(70)=茨城県牛久市=が父親の遺品から発見。体験を継承しようと初めてCD―ROMにまとめた。

 「戸坂原爆の記録 爆心から六キロ 一軍医と村人の記録」と題したディスクは、「村人の手記・証言」「一軍医の記録」などに分け、本人や遺族の了承が取れた十七人の手記や証言をまとめた。原爆での焼失をまぬがれた戸坂地区には陸軍病院の分院があったため、被爆者が次々に避難。約三百戸の農家を借り上げた病室で市民らが救護した様子など、あの日の惨状を伝える生々しい証言が寄せられている。

 「戸坂原爆の記録」は村上さんが二年前、「市職8・6会」で活動した父の遺品の中から偶然見つけた。村上さん自身も八歳の時、爆心地から一・七キロの白島九軒町の自宅で被爆した。「被爆者だけでなく、惨劇を見た目撃者の言葉を大事にしたい」と、自らが所属する市民団体「HIROSHIMA SPEAKS OUT」に呼び掛け、日本語だけでなく、英訳もCD―ROMに掲載した。

 一九七六年に、戸坂公民館の職員が地域の三十三人の証言や手記を集めた初版は五百冊を作成。三版まで作成されたが、公民館に残るのは十五冊のみ。現在は公開していない。「戦争直後の地元の様子を知らない子どもも増え、証言者も少なくなっていく中、大変貴重」と館長の岡杖新男さん(60)は話す。

 CD―ROMは、希望する小、中学校に無料で配布する予定。販売も計画している。村上さんは「切実な思いで看病した人を知ってほしい。若者世代が平和について考えるきっかけになれば」と話している。(中川雅晴)

【写真説明】住民らの貴重な証言を集めた「戸坂原爆の記録」のCD―ROM


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