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ジュニアライターがゆく

『ジュニアライター発』 原爆劇「ヒロシマの孫たち」に出演 被爆者と観客つなぐ演技

 僕は今夏、少し変わった表現方法の原爆劇に出演しました。証言を聞き取り歴史を記録する「オーラル・ヒストリー」の手法を取り入れて制作された「ヒロシマの孫たち」という芝居(しばい)です。

 出演したのは、小学2年生から被爆者までの38人。被爆の惨状(さんじょう)や、焼け野原で生き抜き復興に力を尽(つ)くす人々の姿を描きます。メークや大道具を使って演じるのではありません。白い服を着た役者が、台本から受けたイメージをせりふに加え、体を動かして表現するのが特色です。観客に想像してもらうのです。

 例えば、原爆投下のシーン。子ども数人が空を指さし、「Bじゃ!」と叫(さけ)びます。一気に暗くなり、静寂(せいじゃく)の闇(やみ)へ。あらかじめ「広島の7本の川」をイメージして舞台(ぶたい)に並べていた衣服や生活用品を、大人5人がモップでザーッと崩(くず)します。ささやかな人々の暮らしを無差別に一掃(いっそう)してしまう核兵器の恐ろしさを表しています。

 英国の劇団と広島市民が2014年から共同で作り始めました。脚本(きゃくほん)は、広島の子どもたちが取材して聴いた被爆者15人の証言が基になっています。出演者も意見を出し合い、昨年の夏、初演を果たしました。劇ではインタビューに応じた被爆者の声も流れます。ことしは8月6、7の両日、広島市中区のJMSアステールプラザで計3回公演。約300人が見に来てくれました。

 演出を担当したNPO法人シアター&パペットアンサンブルグラシオブルオ(東京)の芸術監督(かんとく)、秋葉よりえさんは「出演者が被爆者の声を受け取り理解して、観客という他者に伝えていく。被爆者と役者、観客がつながっていくことを大切にして作った」と話します。観客からは「被爆者の悲しみや核兵器の不条理さがストレートに伝わり心に響(ひび)いた」と感想が寄せられました。

 英国やパレスチナ自治区でも上演されるなど世界に広がっています。被爆者が少なくなる中、記憶を継承(けいしょう)する方法として、演劇はとても有効だと感じました。(高3松尾敢太郎)

(2016年9月19日朝刊掲載)

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