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原爆ドーム保存 着工 広島市 入札不調3度で遅れ

 広島市は3日、世界遺産の原爆ドーム(中区)の鋼材を塗り替えるなどの保存工事を始めた。当初は2019年10月までに終える予定だったが、相次ぐ入札不調で着工が遅れていた。近く作業用の足場を組み、来年3月まで工事を進める。

 保存工事は1967年に始まり5回目。今回は、89年に塗装したドーム部分やらせん階段の鋼材を、被爆当時に近いとされる焦げ茶色に塗り直す。塗装前に除去しきれなかったさびを化学処理する新しい手法を採用。従来より長い保護効果が期待できるという。

 ほかに、壁のれんがの継ぎ目、窓部分の柱のひび割れなどを補修する。この日は、作業員4人が原爆ドームを囲む柵の一部を取り外し、作業用の出入り口を設けた。日本語と英語、中国語、韓国・朝鮮語の4言語で工事の概要を伝える説明板も設置した。

 市は今回の保存工事の入札を19年2月に始めたが、入札不調が3度続いた。4度目の入札で、過去4回の工事を手掛けた大手ゼネコンの清水建設(東京)が7400万円で落札した。

 市公園整備課は「ようやく着手できてほっとしている。被爆の実相を伝えるドームを後世に残す市の役割を果たしたい」とした。(明知隼二)

(2020年9月4日朝刊掲載)

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