×

ニュース

原医研の被爆病理標本デジタル化 CF苦戦 支援呼び掛け

 1945年秋までに死亡した広島の原爆犠牲者の病理標本をデジタル画像にして残そうと、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研、広島市南区)が開始した事業費のクラウドファンディング(CF)が苦戦している。14日現在の寄付額は、目標の約3分の2。締め切りの30日に向けて、支援を呼び掛けている。

 占領期に米軍が接収し、73年に戻された「米軍返還資料」で、骨髄など臓器を薄く切り取ってガラス板に貼り付けた標本約2500枚。原爆により壊滅した広島で、遺体を解剖した日本人医師や研究者らが作成した。歴史資料として、原爆放射線による急性症状の実態を示す学術資料として貴重だ。

 標本の経年劣化が進み、一部は著しく色あせている。デジタル化は時間との闘いだ。原医研は2017年度から国に予算化を求めているものの実現しておらず、CFによる資金調達は「苦肉の策」といえる。

 7月下旬に350万円を目標に開始し、現在の寄付金額は約230万円。目標額に届かない場合も事業の継続を目指すが、2022年に予定しているデータベース公開は延期を余儀なくされる可能性がある。担当の杉原清香助教は「病理標本は、原爆犠牲者の声なき声でもある。幅広い支援をいただきたい」と話している。

 CFのウェブサイトはhttps://readyfor.jp/projects/rirbmkaisekibu(山本祐司)

(2020年9月15日朝刊掲載)

年別アーカイブ