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F35Bの安全性強調 追加配備で岩国市に国回答 隊員も質向上と説明

 岩国市の米軍岩国基地に米海兵隊が最新鋭ステルス戦闘機F35Bを追加配備する計画について、国は14日、岩国市や県などからの21件の問い合わせに文書で答えた。市の島しょ部や周防大島町の一部で騒音が増加するとしたほか、機体の安全性は「問題ない」と強調。基地配属の隊員の質も向上しているとした。(有岡英俊)

 米国防総省が報告書で安全性の問題を指摘したとされる機体について、国は米側が既に改善し適切な対策を講じているとした上で「我が国としても飛行の安全に影響はないことを確認している」と回答。今後も米国と緊密に連携し適切に対応するとした。

 2018年12月に岩国基地所属2機が高知沖で墜落した事故を巡り、海兵隊の調査報告書が基地に未熟な操縦士が多く配属されていると指摘したことを巡る質問にも回答。米側の人員配置方針の見直しにより、能力の高い初回勤務飛行士の配置や部隊の規律維持、搭乗員の教育を徹底していると説明している。

 追加配備に伴う部隊の交代方法については、船舶での輸送でなく、F35機自体の飛来と説明。段階的に米本土へ移す既存のFA18ホーネット戦闘攻撃機の部隊と併存する可能性があるとした。岩国基地に新たに赴任する隊員への新型コロナウイルスの感染防止対策は厳格な措置を実施しているという。

 また、F35Bが過去に起こした事故について、米海軍安全センターが最も重大な事故の「クラスA」と判断した3件を記載。2019年5月に岩国基地滑走路上で鳥と衝突したバードストライクをはじめ、18年9月の米サウスカロライナ州ビューフォート基地所属機の墜落や16年10月に同基地所属機が飛行中に出火した事案を挙げた。

周防大島に不安の声 岩国でも懸念

 米軍岩国基地へのF35Bの追加配備を巡る照会への国からの回答で、騒音が大きくなるとされた周防大島町の住民からは不安の声が上がった。岩国市の住民団体も疑問や懸念を口にした。

 国が示した騒音予測図は周防大島町東部でうるささ指数(W値)70の範囲が広がると想定。「どんな音になるのか不安。静かな環境を壊さないでほしい」と該当エリア周辺に住む同町伊保田のミカン農家浜田利博さん(71)は眉をひそめた。

 一方、基地所属の戦闘機が4機増えるにもかかわらず、岩国市の市街地は騒音に大きな変化はないと国は説明する。「あたごやま平和研究所」の田村順玄所長(75)は「騒音予測は実態と合っているのか。今回の配備を許せば、家庭の車をグレードアップするように新しい戦闘機がどんどん岩国に来ることになる」と疑問を呈した。

 「F35Bの短距離離陸や垂直着陸の訓練が増え、騒音が増える恐れがある」と訴えるのは「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の久米慶典顧問(64)。国が配備後の訓練の場所や内容を明らかにしていないことを問題視する。

 国防と日米同盟維持のため追加配備はやむを得ないとする「岩国の明るい未来を創る会」の原田俊一代表世話人(87)は「騒音が増大し、訓練の飛行ルートに新たな地域が加わるのなら住民が納得できる説明が必要だ」とくぎを刺した。市の村上武史基地政策課長は「国の回答を踏まえ、騒音や安全性などにどのような影響があるのか県と整理したい」と話した。(永山啓一、余村泰樹、有岡英俊)

<F35B追加配備を巡る国からの主な回答>

部隊交代・運用 F35Bと既存のFA18部隊が若干の期間、併存する可能性。米
        軍の運用に関わるため、詳細は承知していない
騒音の予測 陸上部分でうるささ指数(W値)70以上の地域が一部増加。75W以
      上の地域に大きな変化はない
安全性 米国防総省は飛行の安全に関する課題は改善されたとしている。国も米側か
    らF35Bの課題のリストを得た上で、飛行の安全に影響する問題はないこ
    とを確認
隊員の技量 訓練を重ね、F35Bの操縦資格を取得した後に配置。米側の人員配置
      方針の見直しで能力の高い初回勤務飛行士を配置、部隊の規律維持に取
      り組んでいる
コロナ対策 移動制限措置、PCR検査の義務付けなど厳格な措置を実施

(2020年9月15日朝刊掲載)

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