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さらなる軍事拠点化懸念 F35B追加配備 岩国市容認 生活環境 守る方策を

 岩国市が25日に容認した米軍岩国基地への最新鋭ステルス戦闘機F35Bの追加配備計画は、既に極東最大級の航空基地となった同基地の軍事拠点化を一層高める懸念がある。市は新たな機体の運用実態を的確に把握し、騒音や事故への不安を抱える住民に誠実に対応する必要がある。

 2010年5月の基地滑走路の沖合移設以来、F35Bの米国外での初配備や空母艦載機約60機の移転などが相次いだ岩国基地。FA18ホーネット戦闘攻撃機12機に代わり、F35B16機を配備する今回の計画について軍事評論家の稲垣治氏は「単なる機種更新ではなく役割や訓練内容は大きく変化する」との見方を示す。

 F35Bの最大の特徴である短距離離陸と垂直着陸ができることを生かし、上陸作戦用の強襲揚陸艦への搭載が進む可能性が高いという。強襲揚陸艦は空母よりも甲板が狭く、従来のFA18ではできない運用だ。

 核・ミサイル開発を続ける北朝鮮や海洋進出を強める中国をにらみつつ、中東地域までの広範囲な有事への対応に当たるとみられる。稲垣氏は「追加配備に伴い、強襲揚陸艦で運用するために必要な短距離離陸と垂直着陸の訓練が確実に増える」と指摘する。

 一方、防衛省は訓練内容について「従来のFA18とほぼ同様と説明を受けているが、詳細は承知していない」と説明。騒音も「市街地では大きく変化しない」としているが、短距離離陸や垂直着陸の訓練が頻発した場合、基地周辺の騒音は大きくなる恐れがある。戦闘機が4機増える分、事故のリスクも高まる。

 25日の市議会本会議でも議員から追加配備への不安の声は相次いだ。「基地との共存」を掲げる岩国市は訓練の実態や騒音の状況を詳細に把握し、住民の生活環境を守る手だてを確実に講じることが求められる。(永山啓一)

≪米軍岩国基地を巡る主な動き≫

2010年   5月   約1キロ沖合へ移設した新滑走路が運用開始
  12年  12月   国内2カ所目となる軍民共用の岩国錦帯橋空港が開港
  14年   8月   米軍普天間飛行場(沖縄県)からKC130空中給油機
             (15機)が移転
  17年   1月   最新鋭ステルス戦闘機F35Bが米国外で初配備。現在
             は16機態勢に
        8月   厚木基地(神奈川県)から空母艦載機の第1陣が移転
  18年   3月   空母艦載機4機種約60機が移転完了
  20年   8月   防衛省がF35Bの追加配備計画を岩国市に説明
        9月   岩国市がF35Bの追加配備計画を容認すると表明

(2020年9月26日朝刊掲載)

F35B追加配備 容認 岩国市長「大きな影響ない」

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