×

ニュース

布野の防空監視哨 絵筆で 戦時中 飛来する米軍機の見張り場 地元の福井さん制作

 広島県三次市布野町横谷の造形作家福井誠さん(66)が、米軍機の飛来を見張るために戦時中の警察が設けた「防空監視哨」をテーマにした絵画を完成させた。同市十日市南の市交通観光センター2階で開催している県北在住の作家との4人展「cosa’L(こさえる)12」で展示している。(石川昌義)

 布野村史には、多幸太山(標高564メートル)の山頂付近に設けられた監視哨に青年団員が交代で詰めた、との記述が残る。地元のケーブルテレビの番組で監視哨の存在を知った福井さんは昨年夏以降、同町上布野と作木町上作木の境にある監視哨跡に何度か出向いた。

 アクリル絵の具で描いた作品は「三次凡景」と題した7枚シリーズの1作で、縦1・3メートル、横1・2メートル。米軍機の飛来を音で察知するために設けたコンクリート製の聴音壕(ごう)があったとみられるくぼ地を描き、現代の布野町に飛来する米軍の戦闘機の写真を貼り付けた。監視哨跡で拾った茶わんのかけらなども展示。当時の息づかいを表現した。

 会場には、デザイン作家反田龍治さん(58)=海渡町=と画家田川幸義さん(69)=安芸高田市向原町坂、写真作家佐々木輝義さん(57)=十日市中=の近作を展示している。福井さんは「戦時中の人々がどんな思いで空を見上げていたのか。実際にその場にいた人に聞いてみたい」と話す。11日まで。無料。福井さん☎0824(54)0388。

防空監視哨
 1937年施行の防空法に基づいて各地に設置された。県警察百年史によると、終戦時には布野のほか、川地(三次市)や吉舎(同)、東城(庄原市)など県内33カ所にあり、青年学校の生徒や在郷軍人が監視を担った。八千代町史には、根野村(現安芸高田市八千代町)の監視哨の所員が45年8月6日朝、米軍機の原爆投下によるきのこ雲を目撃した、との記録がある。

(2020年10月6日朝刊掲載)

年別アーカイブ