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社説・コラム

『美術散歩』 14人のヒロシマ 力強く

◎ヒロシマ平和絵画展 24日まで。広島市中区袋町、旧日本銀行広島支店

 被爆75年の節目に、ヒロシマを画題としてきた広島市在住の画家たちが声を掛け合い、初めて企画した。プロ、アマチュアを問わず、14人が直近10年の代表作計31点を並べる。

 少年時代を旧満州(中国東北部)で過ごした吉野誠の「黒い折鶴‼またあの時が」は、くしゃくしゃに破れた紙のモチーフが、戦争で粗末にされた命を表す。米田勁草(けいそう)の「広島不虚―ひろしまむなしからず」は、現代の広島を描いた画面の下半分に無数の被爆したがれきが広がる。風化させてはならない記憶が堆積するかのようだ。

 モノトーンの絵の具を塗り重ねた樋谷邦夫の「忘夏(黒い雨)」は、黒い雨に打たれ、うなだれたヒマワリが痛々しい。一方、西村不可止の「復 ヒロシマ2011」は、陽光に満ちた明るい色彩。力強く咲くキョウチクトウが希望を象徴する。久保田辰男、野尻純三、千馬弘子らの出展作も、画境を深めた一枚一枚から思いがあふれ出す。=敬称略(福田彩乃)

(2020年10月20日朝刊掲載)

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