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原爆資料館の修学旅行生減 コロナ禍 4~10月は前年の2割 広島市、誘致へ助成金

 新型コロナウイルスの影響で、広島市中区の原爆資料館を訪れる修学旅行生が大幅に減っている。今年4~10月は約4万1千人と前年同期の2割。感染を懸念して行き先を変更する学校が多かったのに加え、4、5月の臨時休館や、その後の入館制限が響いた。秋の修学旅行シーズンの10月も前年同月の4割までしか回復していない。市は、修学旅行に対する独自の助成制度を設けて全国の学校に来館を呼び掛けている。(新山創、猪股修平)

 修学旅行生の数は、団体で訪れる小中高生数をカウントしている。今年4~10月は575校の計4万1322人。前年同期の3595校の24万2174人に比べ82・9%減った。

 新型コロナの影響で、資料館は2月29日から5月末まで約3カ月間、臨時休館した。入館者数を制限して再開した6月は1校の13人のみ。7~9月も前年同月の3・4~39・1%で推移。例年最も混み合う10月も401校の2万8159人と39・7%にとどまる。

 大幅減となった理由の一つは、修学旅行の中止や行き先の変更だ。毎年、2年生が訪れる東北学院高(仙台市)もその1校。「被爆地である広島の訪問は、平和学習に欠かせない要素だったが、新型コロナのため断念した」と和田知久教頭。代わりに先月、地元で仙台空襲の証言を聞く集いを開いたという。

 資料館は、感染リスクが高い「3密」状態にならないよう、30分当たり最大200人までの入場制限をかけつつ、130人分の事前予約枠を設けて修学旅行生などに配慮している。それでも「希望する時間に予約できず、来館を諦めた学校も相当数あるはず」と資料館啓発課は推し量る。

 実際に、修学旅行生も対象にした、資料館主催の被爆証言や証言を受け継ぐ伝承者の講話、平和学習会、ボランティアによる碑巡りガイドの今年1月以降のキャンセルは2807件(11月2日時点)に上る。

 被爆の実態に触れる平和教育を推進する市は8月、感染予防を徹底した上で修学旅行を誘致しようと独自の助成制度を設けた。近隣23市町を除く遠方から平和学習に訪れる小中高校が対象。宿泊する場合は1人2千円、1校60万円を上限に助成する。3密を回避するためのバスの増便や広い食事・宿泊場所の確保に利用してもらいたいとする。

 効果も出ている。静岡県の県立高校は制度を利用し、2年生の旅行先を渡航制限のあったシンガポールから広島や大阪に変更した。引率した男性教諭(42)は「平和学習なら広島だと思った。生徒は熱心に資料館を見学し、来て良かった」と手応えを感じていた。

 助成は来年3月まで。国の臨時交付金2億4900万円を生かし、約2千校の計約15万人の利用を目指す。山口芳明観光プロモーション担当課長は「これまで広島以外を行き先にしていた学校に目を向けてもらう好機でもある。制度の周知に努め、積極的な利用を促したい」としている。

(2020年11月12日朝刊掲載)

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