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家族が協力 被爆手記 母失った戦後もつづる 東京の田戸さん 自費出版

 東京都東大和市に住む田戸サヨ子さん(90)が、広島での被爆体験や、戦前戦後の暮らしをまとめた手記を自費出版した。地域の子どもたちに「あの日」を語り続ける姿を見守ってきた家族が執筆を提案。編集を手伝い、完成させた。原爆資料館(広島市中区)に近く寄贈する。

 田戸さんは、14歳の時、爆心地から3・3キロの市立第二高等女学校(現舟入高)の教室で被爆した。周りにいた同級生の多くはガラス片が全身に刺さり、血だらけだったという。逃げる途中、大やけどをした人たちから水を求められたがどうすることもできず「何年たってもあの人達(たち)に心の中で手を合わせ詫(わ)び続けている」とつづった。

 爆心地近くの相生橋を渡って十日市町(中区)周辺で見た被爆後の惨状や、原爆で母親を失い、兄姉妹4人で生きた戦後の暮らしについても記している。

 夫の転勤で東京に移り住み、東京都の被爆者団体「東友会(とうゆうかい)」に参加。約25年間、地域の小学生らに平和学習で体験を語ってきたという。

 本の題名は「空の鳥、野の花のように 神の恵みに生かされて」。次男の義彦さん(63)=横浜市=たちが手書きの原稿をパソコンで入力したり、挿絵を描いたりした。昨年10月に完成し、100部を孫たち家族35人や、知人に渡した。

 「戦争や原爆を経験しながらも温かい家族に支えられてきた」とほほ笑む田戸さん。義彦さんは「母の生きてきた時代の変遷を知ることができた。被爆体験を含めて家族で継承していきたい」と話した。(新山京子)

(2021年1月11日朝刊掲載)

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