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米国が臨界前核実験 禁止条約発効前「水差す」

 米国が昨年11月に臨界前核実験を実施していたことが明らかになった16日、広島の被爆者や、核兵器廃絶を目指す団体からは憤りや懸念の声が上がった。核兵器禁止条約の発効を22日に控え、参加しない日本政府により主体的な取り組みを求める意見も出た。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(78)は「条約の発効で廃絶の機運が高まる中、水を差された思いだ」と強調。20日に就任予定のバイデン次期大統領に対し「オバマ前大統領と同様、広島に来て被爆の実相に触れ、廃絶への歩みを進めてほしい」と注文した。

 「二度と非人道的な核兵器を使ってはいけないと訴えてきた被爆者の思いを踏みにじった」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(76)も抗議する。核兵器禁止条約に参加せず、締約国会議のオブザーバー参加にも後ろ向きな日本政府を「議論の場にも立たないのはあり得ない」と批判した。

 トランプ政権は、中距離核戦力(INF)廃棄条約を離脱。「使える核兵器」と呼ばれる小型核を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実戦配備も発表した。非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)国際運営委員(52)は「トランプ政権が進めた核兵器の質的強化が最後まで続いた。日本政府は首脳会談などの場で見直しを働き掛けるべきだ」と指摘する。(桑田勇樹)

(2021年1月16日朝刊掲載)

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