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核禁止条約22日発効 保有国へ圧力期待

 核兵器の開発や使用などを全面禁止する核兵器禁止条約が22日、発効する。「核なき世界」を求める国際世論や広島、長崎の被爆者たちの訴えが結実した条約は、核兵器そのものを非人道的で違法とみなす史上初の国際規範となる。核保有国や日本政府など「核の傘」に頼る同盟国が条約に背を向け続ける中、核軍縮を保有国に迫る圧力となることが期待される。

 条約は2017年7月、国連の交渉会議で核兵器を持たない122カ国・地域の賛成で採択された。米英仏ロ中の五大核保有国は条約への参加を拒否。インドや北朝鮮など他の保有国、米国の核抑止力を重視する日本も安全保障上の理由から参加していない。

 発効後、1年以内に開く締約国会議には、未批准国もオブザーバーとして参加できるが、菅義偉首相は「慎重に見極める必要がある」との見解を示す。条約の実効性を高めるには、保有国や同盟国を巻き込み、批准国を増やすことが鍵となる。

 条約は、非保有国や非政府組織(NGO)などが連携して国際世論を動かすことで成立した。精力的なロビー活動で制定を推進したNGO、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))は17年、ノーベル平和賞を受賞した。

 それらの大きな推進力となったのは、核廃絶を求める広島、長崎をはじめとした世界の被爆者たちの訴えだ。

 「核兵器と人間は共存できない」「がれきの下で同級生は生きたまま焼かれた」。国際会議などで被爆者は証言を重ねた。また核兵器が使われたらどうなるか。各国に具体的に想起させ、核兵器の非合法化を検討させる礎となった。

 日本被団協などが16年4月に始め、条約締結を全ての国に迫る「ヒバクシャ国際署名」も、条約制定の機運を盛り上げる役割を果たした。署名は1300万人を超え、国連に届けた。

 そのヒバクシャ署名の一部を国連に届けた広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(78)=広島県北広島町=は、発効に向けた「カウントダウンボード」を自宅敷地に設けた。被爆から75年と5カ月。「条約という希望の光がやっと見えた。保有国が1カ国でも参加するよう『人類のために』との思いを胸に核兵器廃絶を訴え続ける」。決意を新たに発効日を迎える。(久保田剛)

核兵器禁止条約
 核兵器の開発や実験、保有、使用、核兵器を使用するとの威嚇などを全面的に禁止する史上初の国際条約。前文で核兵器使用によるヒバクシャの受け入れがたい苦しみに留意すると明記した。2017年7月7日、国連で122カ国・地域の賛成により採択され、同9月に署名・批准をスタート。昨年10月24日、批准数が発効に必要な50カ国・地域に達し、90日後の今月22日の発効が決まった。署名・批准国には中南米やアフリカ、オセアニアの小国が目立ち、米ロなど核保有国は条約自体に反対している。核兵器廃絶の検証など廃絶を進める具体策は発効から1年以内に開かれる締約国会議で決める。

(2021年1月21日朝刊掲載)

核禁条約 参加の道筋は

核禁止条約発効を歓迎 広島県宗教連盟 知事に声明文

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