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原爆資料館が図録一新 犠牲者の遺品写真多く

 原爆資料館(広島市中区)は、2019年4月に全面リニューアルした常設展示の内容を盛り込んだ「広島平和記念資料館総合図録―ヒロシマをつなぐ―」を完成させた。同館の図録の一新は、1999年に発行した「ヒロシマを世界に」以来。

 実物資料を通して原爆被害を伝える、との展示方針を反映し、犠牲者の遺品を捉えた写真を多く掲載する。表紙は写真家の江成常夫さん(84)が撮影した「はさみで切って脱がせた学生服」。やけどの皮膚に張り付いたため切り取られた布の空白部分に、「喪失」への思いを投影する。

 「軍都広島」の歴史や戦時中の生活をひもとく第1章から、戦後の平和運動や被爆者の願いに触れた第6章まで時系列で展開。詳細な年表や、平和記念公園の慰霊碑マップも付けた。

 中国新聞社が写真撮影や寄稿で協力した。遺品のうち「三輪車と鉄かぶと」「ワンピース」などは高橋洋史カメラマンが撮り下ろした。藤村潤平記者たち4人が「平和記念公園に眠る街」「カープ球団誕生秘話」などのコラムを寄せた。

 「展示と向き合いながら『何か行動したい』と思った人の役に立つ情報を盛り込んだ」と土肥幸美学芸員。加藤秀一副館長は「現在に至る広島と被爆者の歩みに関心を寄せ、知識を深めてほしい」と話す。

 A4判134ページ。英語版もあり、いずれも1500円。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて臨時休館中のため、再び開館し次第、東館1階ミュージアムショップで販売する。(金崎由美)

(2021年1月23日朝刊掲載)

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