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社説・コラム

イラクで初開催 がん国際会議で講演 「NO DUヒロシマ」嘉指信雄代表に聞く

■記者 森田裕美

 イラク南部バスラで今月6、7日の両日、がんに関する国際会議が初めて政府公認で開かれた。湾岸、イラク戦争で劣化ウラン弾(DU)が使用された現地はがん患者が増加している。招かれて講演し、広島市内で帰国報告した市民団体「NO DUヒロシマ・プロジェクト」代表の嘉指(かざし)信雄神戸大教授に課題を聞いた。

 -イラク政府が会議を公認した意味は。
 バスラ大医学部などが主催し、保健省が後援した。米軍などによるDUとがん発症の因果関係ははっきりしないが、現地の医師はDUによる健康への影響に問題意識を持っており、保健省の後援は政府が重大な問題ととらえ、対応を始めたことを意味する。

 -入国も難しいイラクにDU禁止運動に取り組む外国人として招かれました。何を訴えましたか。
 十数カ国の400人以上が参加した会議の冒頭で、広島や世界のDU禁止キャンペーンの現状を報告した。国連総会は一昨年と昨年、DUについて各国に見解の提出を要請する決議をした。被害国のイラクこそ決議に応えるよう呼び掛けた。

 -参加者の反応は。
 DUとがん発症との因果関係について、そもそも信頼できる住民のデータがないイラクの実情から、疫学調査の難しさを指摘する声も出た。だが、DUが落とされた地域でがんの発症率が高いとの報告や、この15年間で小児がんが少なくとも倍増したとの発表もあった。保健相も「DU問題を憂慮している。科学的データを踏まえ取り組みたい」と話していた。

 -今後は何が必要になりますか。
 科学的な調査も課題だが、病院などを訪問すると、がんの増加が深刻化しているのは確かだった。広島の市民団体の招きで来日し、広島大で研修を積んだ医師たちが現地で活躍している。人的な支援に大きな可能性を感じる。

劣化ウラン弾(DU)
 核兵器製造や原発の核燃料濃縮過程で生じる放射性廃棄物である劣化ウランの高い比重に着目し、貫通力を強化した対戦車用の砲弾。燃焼時に酸化ウランが微粒子で飛散し、健康被害が懸念される。米軍が開発。1991年の湾岸戦争以来、コソボ紛争やイラク戦争でも使用された。2003年に民間組織の「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)が英国を本部に発足。29カ国の112団体が加盟する。

(2009年5月22日朝刊掲載)

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