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社説・コラム

天風録 「危険なラブレター」

■論説委員 石田信夫

 好きな子にちょっかいを出す。わざといたずらをしてみる。子どもの世界ではよくあることだ。文字にならないラブレター。でもその気持ちは、まず届かない。男性なら、ほろ苦く酸っぱい思い出の一つや二つはあろうか▲北朝鮮が2回目の地下核実験をした。核放棄を話し合おうという六カ国協議のテーブル。そこに背を向けての強行である。実はオバマ米大統領への「ラブレター」という見方もあるようだ▲北朝鮮が何よりも望んでいるのは「独裁体制の保証」とされる。そのためには、保証人になってほしい米国とサシで交渉しなければならない。しかし米国は「まず六カ国の枠で」。それならば、と強く出たという▲子どもは「試し行動」をするといわれる。わざと言うことを聞かなかったり、嫌がることをしたりして、どこまで相手が耐えてくれるかを試す。「本当に守ってくれる人」かどうかを確かめるリトマス試験紙なのだろう。北朝鮮の外交は政略的で各国を翻弄(ほんろう)しているように見えながら、子どもじみてもいる▲あれだけの資金があったら、1年間の食糧難を解消できるのに…。先だってのミサイルの実験の際に言われた言葉だ。飢えた民をほったらかしにして突き付けた危険極まりないラブレター。誰が受け取る気になるだろう。

(2009年5月26日朝刊掲載)

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