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社説・コラム

社説 非核保有国外相会合 被爆国主導の意義とは

 北朝鮮の弾道ミサイルをめぐり、東アジアが緊迫する中での開催となった。

 10カ国の非核保有国でつくる「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」の外相会合がおととい、オランダであった。日本から岸田文雄外相が出席。核開発を強行し、挑発行為を繰り返す北朝鮮に自制を強く求める共同声明を採択した。

 あらゆる機会を生かし、外交圧力をかけることが肝心である。ここで10カ国が一致し、国連安全保障理事会決議の順守を迫ったのは当然であろう。

 NPDIは3年前、日本とオーストラリアの主導で発足した。核拡散防止条約(NPT)体制の強化に貢献することを目指す有志国のグループである。

 6回目となった今回の外相会合は、近く開かれるNPT準備会合で示す提案をすり合わせるため開かれた。来年春には広島市内での外相会合を控える。

 多国間の核軍縮・核不拡散条約は、いまのところNPTだけである。一方で、NPTの限界と課題も指摘されてきた。北朝鮮の核問題は、くしくも深刻な一例だ。NPDIがいくらNPT体制の強化を掲げても、核開発を止められないのは悲しい現実である。

 国際社会が北朝鮮の弾道ミサイル開発を危ぶむのは、核開発が進み弾頭の小型化に成功すれば、脅威が一気に増すからにほかならない。

 北朝鮮は秘密裏に核能力を得た揚げ句、NPT脱退を宣言した経緯がある。加盟国に原子力の平和利用を認めるという、条約のジレンマを悪用した形である。一方的な脱退を確実に阻止する規定はなく、国際社会は頭を痛めてきた。

 加えてこの条約は、米国、ロシア、フランス、中国、英国にだけ核保有を認める「不平等性」をはらむ。非同盟諸国(NAM)などが不満を募らせ、5カ国に大胆な核削減を迫ってきた。

 NPDIは、核保有国とNAMのいわば中間に立ち位置を定める。現実路線ということなのだろう。ただ、NPT体制の強化という旗印にとどまらない、幅広い取り組みにも目を向けていくべきではないか。

 有志国による動きは、ほかにも活発化している。

 昨年秋、国連総会を舞台にスイスやノルウェーなどが、核兵器の「非人道性」と「非合法化」への努力を訴える声明を発表した。30カ国以上が賛同し、署名した。NPTの役割は認めながらも、核兵器を無条件に禁止する新たな条約も目指そう、との模索である。

 日本政府は署名を拒んだ。「米国の『核の傘』は不可欠だ」と違法化に難色を示したのである。被爆者をはじめ国内外から批判と失望を招いたのも無理はない。

 岸田外相はNPDIの広島会合を「核兵器のない世界への出発点になる会合としたい」と語っている。言葉通りに被爆国の発信力を高めるには、もっと多様な試みとも向き合うべきだろう。核の傘に頼ろうとする、自らの足元を見つめ直していくことが避けられない。

 NPDIに名を連ねるメキシコは、「非合法化」への機運も主導する。日本の役割も、NPT体制への貢献を自賛するだけにとどまらないはずだ。

(2013年4月11日朝刊掲載)

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