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社説・コラム

天風録 「ハビタブルゾーン」

 「ハビタブルゾーン」と呼ぶらしい。日本語で生命居住可能領域、すなわち生命体が存在する可能性を秘めた宇宙空間を指す。米航空宇宙局(NASA)が太陽系の外で、候補となる三つの惑星を新たに見つけたという▲ボストンのテロ事件に隠れ、日本ではほとんど報道されなかった。ただ、そんなに驚く話でもなさそうだ。人工衛星に載せた米国の最新望遠鏡が既に、千の単位で期待の星を把握していると聞く▲爆薬とともに金属玉やくぎを圧力鍋に詰め込む。殺傷力を高めるために。あのボストン事件の容疑者はいったい何を考えていたのだろう。罪のない命を奪おうとする魂胆がおぞましい。テロがやまない地球こそハビタブルゾーンと縁遠くなってはいないか▲容疑者との銃撃戦の衝撃で、こちらも紙面での扱いが幾分小さくなった。「赤ちゃんを3年間抱っこし放題してから職場復帰を」。安倍晋三首相が育児休業の大幅延長を経済界に求めた▲生まれくる命をしかと抱き留め、周囲が支えていく。そんな当たり前のことができず、保育所の空きを待つ子が何十万人もいる現状こそ嘆かわしい。大宇宙の生命体探しに夢は膨らむが、まずは足元から。

(2013年4月21日朝刊掲載)

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