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社説・コラム

被爆国日本の役割 広島県廿日市出身 山本ハンガリー大使に聞く

 広島県廿日市市出身の山本忠通ハンガリー大使(62)が公務で一時帰国した。同国の核軍縮への姿勢や、被爆国の大使としての活動を聞いた。(藤村潤平)

「人類の悲劇」理解広める

 ―核軍縮に対するハンガリーの立場は。
 米ニューヨークで9月にあった包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議で、マルトニ外相が共同議長を務めた。昨年は北大西洋条約機構(NATO)の大量破壊兵器に関する軍備管理・不拡散の会議を国内で開催するなど、核軍縮を重要視している。

 一方で、NATOに遅れて加盟したため、その一員として、軍事力をもって欧州の平和と安定の維持に積極的に協力したいという考えも持っている。

 ―現地では被爆国日本をどうみていますか。
 広島、長崎への原爆投下は人類の悲劇だと広く理解されている。日本が毎年、国連総会に提出している核廃絶決議案の共同提案国でもある。ただ、オピニオンリーダーや財界人には、経済大国のイメージがやはり強い。

 ―日本の平和への取り組みをどのように広めていますか。
 大学などで講演を求められると、なぜ日本が平和主義を志向するかを話している。先の大戦で被爆国、敗戦国となり、平和は力によって実現するものではないという国民のコンセンサス(合意)が根差していると説明する。力を行使しない国だからこそ、カンボジアでの紛争解決に貢献できたことなどを紹介している。

 ―被爆地の役割は。
 私が広島出身であると言うと、聞く人は必ず居住まいを正す。いろんな考え方や立場があるにせよ、人類にとって被爆地がどれだけ大きな意味を持っているかを実感する。広島、長崎で起きたことが、人間の尊厳に対する人類共通の価値を呼び起こすのは間違いない。

 外交は、国民の支持がないと空疎になる。場合によっては批判する人の存在も大事だ。被爆地からも多様な声を上げてほしい。

やまもと・ただみち
 長崎県佐世保市や東京都内で育つ。東京工業大を卒業後、1974年に外務省入り。北朝鮮核問題担当大使や国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府代表部大使などを経て、2012年9月から現職。

(2013年10月25日朝刊掲載)

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