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社説・コラム

天風録 「弾の貸し借り」

 「頼まれて例外として渡した」「いいや困ってなどいない」。借金をめぐる押し問答ではない。銃弾1万発の融通となるといろいろ差し障るらしい。提供が禁じられた国と、隣国に借りたと認めたくない国。深い事情が双方に▲南スーダンで平和維持にあたる韓国軍へ、自衛隊が国連を通じて届けた。「緊急度から決めた人道支援」と政府が言えば、当の隣国は「弾は足りているが予備として」。遠い地に赴いた部隊をよそに、何とむなしい応酬か▲部隊にとって脅威の一つがカラシニコフだろう。壊れにくく使いやすいと「定評」の自動小銃は世界に1億丁とも。史上最も多くの人を葬った銃の開発者カラシニコフ氏が世を去った。「武器に責任はない」の持論は覆さずに▲多くの武器を生んだロシアの「英雄」はこうも言う。平和的に問題を解決できない人間こそ悪い―。1万発の提供で、武器輸出を禁じた三原則も骨抜きでは。首相は積極的平和主義を掲げるが、果たして▲4発の弾丸が「餃子の王将」社長の命を奪った。北九州では漁協組合長も。凶弾が飛び交うのは海の向こうだけではない。銃にものいわせる卑劣さと平和のもろさを、胸に刻みたい。

(2013年12月26日朝刊掲載)

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