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連載・特集

平和大通り―復興の軌跡 <3> 慰霊碑

被爆の実態を表す原点

 「天を抱くがごとく両手をさしのべし 死体のなかにまだ生きるあり 深川宗俊」

 そう刻まれた慰霊碑が平和大通り沿いの緑地帯にある。広島市西区福島町の町民慰霊碑。原爆で亡くなった住民約300人の名簿が納められている。

 碑巡りを案内する市民団体「ヒロシマ」によると、平和大通り沿いには15の碑があるという。玉置和弘会長(44)=安佐南区=はなかでも、あまり知られない碑の紹介に力を注ぐ。「碑は被爆の実態を表す原点」。被爆者の故久保浦寛人さんの教えが胸の内にあるからだ。

 久保浦さんは生前、団体の顧問を務め、和歌山県出身の玉置会長たちを育てた。原爆の犠牲者数など統計にこだわる後継者を久保浦さんはこう諭した。「原爆はそんなもんじゃない。生死すら分からない人が大勢いた。その惨状を伝えよう」

 まさにその様子を町民慰霊碑は物語る。玉置会長は「原爆一発でこれほど数多くの碑が建てられた。その悲惨さを碑に語らせる人でありたい」と誓う。

 町民慰霊碑は今日、建立から37回目の夏を迎える。(写真・荒木肇、文・柳岡美緒)

(2012年7月25日夕刊掲載)

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