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連載・特集

都市が紡ぐ 平和市長会議総会を前に <上> 急拡大の表裏

国際舞台 増す存在感

組織の弱さ どう克服

 都市の連帯で核兵器廃絶を―。31年前、冷戦のさなかに発足した平和市長会議は、国の枠組みを超えて加盟都市を増やしてきた。一方で、その求心力となった2020年を目標とする廃絶に向け、効果的な手だてを練らなければならない局面にある。広島国際会議場(広島市中区)で3日開幕する総会を前に、課題を探る。

 爆心地から南西に400メートルの広島平和文化センター(中区)内にある平和市長会議事務局。棚に、申請書や書簡をとじた都市別ファイルが並ぶ。

 1日現在の加盟都市は5712で、157の国と地域にまたがる。「加盟都市の人口を合わせれば10億人。各都市に主体的な行動を促したい」。センターの村上慎一郎・平和市長会議担当課長は、表情を引き締める。

 1982年、被爆地である広島、長崎両市が核兵器廃絶を目指す都市の連帯を呼び掛けて発足。当初は加盟数が伸び悩んだが、2005年に一挙601都市が加わる。

スピーチに重み

 その2年前の03年、平和市長会議は「核兵器廃絶のための緊急行動(2020ビジョン)」を発表。理念に具体的な行動計画が加わり、賛同が広がった。「廃絶目標を明確にしたのが大きい」と村上課長。以来、年間300~千件ペースで増える。

 軌を一にして03年から、核拡散防止条約(NPT)再検討会議や準備委員会では必ず、会長の広島市長か副会長の長崎市長に演説の機会が与えられた。

 NGO核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲共同代表は「平和市長会議のスピーチは他のNGO以上に重みがある。政府関係者もそう受け止めている」と明言する。

 数を背景に国際舞台で増す存在感。その陰で組織の弱さは問題視されてきた。誘われた海外の市長は加盟料がないぶん気軽に加わったが、トップが交代したとたんに疎遠になる。

 連絡は主に英文の電子メール。英語以外の言語だと翻訳しなければ市長に伝わらない「言葉の壁」もある。何より日ごろ、核兵器廃絶へどう活動しているかが分からない。

名ばかり都市も

 事務局は村上課長をはじめ10人。欧米に置く計3人の外国人専門員が勧誘や核関連の情報収集を担う。市幹部は「広島だけで仕切るのは限界」と漏らす。

 課題解決の参考事例はある。145都市が加盟するフランスは97年、平和市長会議の支部を設立。自治体規模に応じて活動費を徴収し、それを原資に事務局員を雇い、広島発の情報をフランス語に翻訳している。

 今回の総会では、地域別の活動を活発で組織だったものにするため「リーダー都市」の導入を決める。全都市に2千円の「メンバーシップ納付金」を求め、参加意識を高める。改革は緒に就いたばかりだ。

 被爆国の足元も盤石ではない。広島修道大の学生が11年、国内の加盟180市区町村に実施したアンケートでは特に活動していない「名ばかり都市」が1割強あった。城忠彰教授(国際法)は「まず国内の加盟都市の活動を活発にする必要がある。被爆国全体の訴えが強まるし、海外の都市にとっても地域活動の参考になる」と指摘する。

(2013年8月2日朝刊掲載)

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